馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

ゼンノロブロイは本質的に美浦向き?

栗山求ブログ: 夏は買えないゼンノロブロイ産駒

ゼンノロブロイ産駒の連対率を“中央開催”と“ローカル”に分けると、クッキリとした差異が認められます。

   中央開催:21.5%
   ローカル:11.8%

これほど適性に差のある種牡馬も稀です。

▼こういう大雑把すぎるデータを見ると、反射的にツッコミを入れたくなります。というか、そもそも種牡馬成績を芝もダートもクラスも東西も分けずに「中央とローカル」で区切ってる時点で眉に唾してみるのは、特別偏狭というわけでもないと思いますが。
 まぁそんなわけで、栗山氏と同じくTARGETで、ロブロイ産駒の成績集計結果(集計期間:2009/07/05〜2010/08/01)を色々調べてみました。栗山氏は全部まとめて出してたみたいですが、こちらは初年度の3歳馬に限定。現2歳世代はまだ14戦しかしてませんので、大勢に影響はない……というか今ぐらいの時期に集計する場合は「ノイズ」であるとみなしました。


▼まず、基本的なところから場所(競馬場)別のデータを出してみましょう。

さて、このデータからなにを読み取るか。まぁ一目瞭然ですが、

  • 東京と中山が突出して好成績。
  • 新潟・中京・小倉が悪い。とりわけ後者2場は顕著。
  • 一方、福島で5勝。勝率は全場あわせてもトップ。
  • 北海道開催の成績は平均的。

といったことがわかります。この時点で、「ローカル適性(なんてものがあるとすればですが)が低い」という分析には無理があると思えないでしょうか。福島なんて、ローカルの中のローカルという競馬場でしょうに……っていつぞや福永祐一が言ってた(意訳)。


▼そもそも大雑把に分けるにしても、中央/ローカルだと勝率の差は2.6%ですが、東開催/西開催だと4.9%の差。こっちはこっちで特徴的なんじゃないか……というわけで今度はこちらのデータを。

調教師別成績(本賞金でソート)です。上から4つ、上位20厩舎中12厩舎が美浦所属。集計対象とした現3歳ロブロイ産駒の中央登録頭数が美浦52頭:栗東54頭であることを考えても、なかなか特異なデータではないかと。


▼んで、結局東開催の中でも東京・中山の成績が突出している原因はなんなんだ、と考えて出したデータはこちら。

競走馬別成績(本賞金でソート)です。というわけで、

あたりが関東メイン2場の成績をガッツリ押し上げていることは明白。まぁそれが「適性」だと言ってしまえばそれまでですが、現時点ではデータに偏りがありすぎて「競馬場別の傾向」をはかるには難があるのでは、という印象。
 ちなみに上位10頭の所属はというと、

賞金順位 所属 競走馬名 着度数 本賞金
1 美浦 サンテミリオン   4- 0- 1- 0/ 5 14630万円
2 美浦 ペルーサ      4- 0- 0- 1/ 5 8700万円
3 美浦 アニメイトバイオ  2- 3- 1- 3/ 9 7860万円
4 アグネスワルツ   2- 1- 1- 1/ 5 6000万円
5 美浦 コスモネモシン   2- 2- 0- 4/ 8 5975万円
6 美浦 ギンザボナンザ   3- 0- 1- 3/ 7 3580万円
7 ハートビートソング 2- 0- 1- 0/ 3 3100万円
8 美浦 ニーマルオトメ   2- 3- 0- 5/10 2805万円
9 カネトシパサージュ 1- 4- 4- 8/17 2140万円
10 美浦 エスタンブラボー 1- 4- 4- 5/14 2030万円
というわけで、やっぱり美浦勢の強さが目立ちます。まぁ切り口を変えただけで実質的には調教師ランキングと同じことを示しているだけですが。


▼というわけで、現時点でのロブロイ産駒の特徴を自分が挙げるなら、(ローカルどうこうなどではなく)

という点を……なんて言うと思ったら大間違いだ!(えー
 えっと、要するに今出ているロブロイ産駒データの中でなにが一番特異かと問われれば、自分なら、

  • 藤沢和・古賀慎の師弟ワンツー

と答えます。これはまぁ、ゼンノロブロイ自身がどんな競走馬だったかという背景を考えれば特になんの不思議もないお話。
 試しに、シンボリクリスエス産駒のデータ(現3〜5歳世代、集計期間:2007/06/24〜2010/08/01、中央登録頭数美浦204頭:栗東201頭)を同じような切り口で挙げてみましょう。 まず場所別。

中央/ローカルの差と比べて、東/西開催の差が顕著です。
 でもって調教師別。

はい、もうおわかりですね。要するにボリクリもロブロイも、

なんだ、ということです。嗚呼、なんというつまらない結論。要するに、血統的要素でもなんでもなく、単なる「人為的な偏り」の結果であろう、というお話でした。池江父先生の現役期間がもう何年かあれば、ディープインパクト産駒に関しても似たような成績が見られただろうな、とも想像できます。


▼ただまぁ、

現役時代を美浦で見ていただけに、調教師の産駒選択時にある種注意してロブロイ産駒を見ていたというのも有りそうですね。

http://twitter.com/pondelion232/status/20265347645

ぐらいには拡大解釈できる可能性もある、という筋で、修辞的に「美浦種牡馬」と定義してしまうのはアリかな、とは思ったりもします。かなりのデータが集まったボリクリ産駒が、いくら藤沢和厩舎に集中しているからといっても、トータルでこれだけ東高西低のデータがはっきりしているのはちょっと面白い気も。いずれにしても、血統ではなく人為の成せるわざではないかと思いますが。
 ちなみに、現時点でのロブロイ産駒に顕著な「中央とローカルの差」は、ご本人が

もちろん、まだ二世代目がデビューしたばかりなので、時間が経てば両者の数値はもう少し縮まってくるでしょう。

栗山求ブログ: 夏は買えないゼンノロブロイ産駒

とおっしゃる通りになるでしょう。もう少し具体的に予言するなら、「いずれボリクリ産駒レベルに収縮するであろう」ぐらいは言ってもいいかもしれません。


▼最後に。色々書いてきましたが、「ボリクリ産駒もロブロイ産駒も揃って中京と小倉の成績が極端に悪い」というのは純粋に面白いですね。中京に関しては、

所属 1着 勝率 2着 連対率 3着 複勝 合計
関東馬 51 3.8% 58 8.2% 64 12.9% 1337
関西馬 141 7.9% 134 15.4% 129 22.7% 1780
(2010年1・2回中京のデータを集計)
と明らかに西高東低なのでまだわからなくもないんですが、小倉に関してはなんとも。この辺の追求は機会があれば(そしてデータが揃ってくれば)いずれまた、ということで。