馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

メジロ牧場、解散へ

▼既に各所でニュース・話題となっていますが、名門・メジロ牧場が解散へ動いていることが判明しました(サンスポ記事によると5月20日)。
 個人的には、マックイーンやライアンは「有史以前」(競馬を本格的に始めたのが1996年頃)だったので、印象として強いのはブライト・ドーベル。こういうドメスティックな血統で一流馬を出す一方、ダーリングのようなハイカラな活躍馬もいて懐の深い牧場だなと感じていました。とはいえ、ここ最近は自前の種牡馬で勝負できるような状況には見えず、また

にあるような一件もあって、オーナーブリーダーとしては厳しい局面にあるのではないかと漠然と思っていたりも。そんなわけで、驚きというよりはむしろ、来るべき時が来たかという感覚が強いです。


▼とりあえずTARGET班として、世代別のメジロ馬成績を表にしておきます。


生産年度 現齢 頭数 勝馬 獲得本賞金 1頭当 代表馬
出走 勝馬
1989 22 20 11 55.0% 43935 2197 カンムリ
1990 21 27 11 40.7% 67824 2512 モネ
1991 20 23 11 47.8% 54632 2375 スズマル
1992 19 19 12 63.2% 47862 2519 シンドウ
1993 18 21 13 61.9% 97249 4631 ファラオ・ランバダ
1994 17 17 6 35.3% 157956 9292 ブライト・ドーベル
1995 16 28 7 25.0% 63688 2275 ランバート
1996 15 27 9 33.3% 106397 3941 ダーリング
1997 14 20 11 55.0% 56339 2817 マントル
1998 13 26 7 26.9% 41693 1604 オーモンド
1999 12 23 10 43.5% 56239 2445 マイヤー
2000 11 26 6 23.1% 27736 1067 モーガン
2001 10 21 5 23.8% 27830 1325 ベイシンガー
2002 9 22 15 68.2% 56395 2563 トンキニーズ
2003 8 26 12 46.2% 36192 1392 シリング
2004 7 22 4 18.2% 14644 666 ラスタバン
2005 6 23 12 52.2% 42445 1845 ラフィキ
2006 5 36 13 36.1% 24326 676 チャンプ
2007 4 27 11 40.7% 14613 541 カトリーヌ
2008 3 23 2 8.7% 2235 97
合計  472 188 39.8% 1040230 2203 マイヤー
※2011/04/27集計
※馬主「メジロ商事」「メジロ牧場」名義の馬を集計
※本賞金の単位は万円
 ものすごくざっくりとした話なので戯言として読んでほしいんですが、一口馬主をやっていての感覚から推測すると、1頭あたり2,000万円も稼いでくれれば、オーナーブリーダーならランニングコスト的には十分回るのではないかなと*1。ただ、設備や繁殖の投資・更新費用を考えると、その程度で長期的に一定の規模を維持していくのは難しいでしょう。自前の種牡馬で種付け料を節約したり稼いだりできれば、まだフォローできたりするのかもしれませんが……。
 翻ってここ10世代ほどのメジロの成績を見てみると、やはりかなり厳しい経営を強いられてきたんだろうな、と想像できます。中央馬の世代全体で見ると、勝馬率は3割強、1頭当たり本賞金は1,200万円前後ですから、以前はともかく近年は「平均以下」という成績が続いていたことに。アベレージの低下もさることながら、重賞級の「かまど馬」が出なくなって久しく……。
 要因は色々考えられますが、個人的には繁殖の更新が上手く行かなかったこと、そして自家種牡馬の結果が(近年)出なかったことが大きいだろうと思います。しかし他の理由も含めて複合的なものだったでしょうし、数字を見る限り震災の影響がなくても時間の問題だっただろうな、と。
 とまれ、西山牧場メジロ牧場と続いてしまっただけに、この流れは押しとどめ難いものなのかもしれません。中央の賞典費や各種手当の減額にも歯止めがかかる気配はありませんし……。
 ちなみにメジロの「名を惜しむ」気持ちは自分としてもないわけではありませんが、一方で盛者必衰・諸行無常もひとつの醍醐味ではあろうか、とも。あの馴染み親しんだ名義や勝負服が消えることへの寂寥感は認めつつも、競走成績のみならず、(今年の皐月賞馬の母父のように)血統的にもメジロの名は既に一定の「不死性」を獲得しているというのが個人的な把握。多くの競馬ファンの「惜しむ気持ち」を餞として跡を濁さず去りゆくひとつの時代を、ただ静かに見送りたいと思います。


▼卑小な話ではありますが、自分の一口馬主趣味も、色んな意味で限界を感じつつあったりします。自分のためにも、またささやかながら競馬界のためにも、できるだけ買い支えたい気持ちはあるんですが、さて。

*1:ちなみに一口馬主だと、状況にもよりますが募集価格にプラスでさらに2,000〜3,000万程度稼いでようやく収支均衡という感じ。