馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

馬インフルエンザ関連、続き。

▼ようやく自PCでの更新に復帰。W-ZERO3でも更新やブクマ付けはできましたが、やっぱりまどろっこしくて・・・・・・。にしても、競馬が無くても旅に出ても本を読んでいても、やっぱり競馬(まぁ主に馬インフルエンザ関連ですが)の情報が気になって仕方ありませんでした。立派な競馬アディクトですね。


▼リハビリがてら、馬インフルエンザ関連で週末気になった記事について軽く。


http://www.nikkansports.com/race/p-rc-tp0-20070819-243742.html

JRAは調教師に対し、陽性馬を他馬と接触させないように指導しているが、発症していない馬の調教に関しては「調教師の判断に任せる」としている。この措置に農学博士の本好茂一氏は「軽率すぎる」と苦言を呈した。

▼本好博士って誰だと思ってググッたら、日本ウマ科学会の元会長と。ほえー。(追記・・・b:id:MARIUSさん、ご指摘多謝。)
 ただ、臨床的な立場から見れば軽率でも、興行主催者側の立場からすれば、陰性馬や陽性でも症状に出していない馬の運動(馬場入り)を禁止するという判断はできないでしょう。そんなことをすれば、厳格に全馬に馬房待機を命じるより正常化は遅れるでしょうし。
 JRAの競走馬総合研究所が編んだ『サラブレッドの科学』(講談社ブルーバックス)の記述を引くと、

  • いったんある馬群で流行が起こった場合、その馬群のなかで発生を食い止めることは不可能である。
  • 香港シャティン競馬場における馬インフルエンザの流行では、ほとんどの馬がワクチン接種されていたにもかかわらず、在厩馬九五八頭中四〇二頭(四二パーセント)が発病した。このことは、ワクチンを接種していても、馬が感染を予防できるようなある一定のレベルの抗体を保有していなければ、あまり意味がないことを示している

とあり、これは当然JRAの中の人(特に獣医系)の見解と受け止めるべきでしょう。にもかかわらずこのような対応を示しているということは、もちろん物理的にトレセン施設内に陽性馬だけを完全に隔離できる場所がないのもあるでしょうけど、トレセン内での蔓延はある程度仕方ないと考えているからではないでしょうか。
 幸いというか、ワクチン接種のおかげか劇症型の罹患馬は少なく、陽性反応を示していても普通に運動が可能な馬が多数いる現状。なおかつ、

安静療法を施すと、軽症例で1週間、重症例でも約3週間で回復します。大部分の馬は10日から15日で回復します。

http://www.equinst.go.jp/JP/book/kansenS/EIF.html

という獣医学的見地から、ある程度ワクチンによる抑制効果を計算に入れた上で、現実的な対応を取っているのではないかと思えます。


▼まぁ、そのワクチンに対するある種の信仰が今回の「不手際」を招いたと見る向きもありましょうが、個人的には

開催を中止するという判断を木曜日に行う必要はないし、出馬投票と出走馬の発表は粛々と行いつつ、方向性を検討する二面作戦はおかしいとはおもえません。

http://d.hatena.ne.jp/Hayato/20070818#p1

というid:Hayato氏のご意見に大筋で同意するものです。
 もし問題があったとすれば(つうか多分あった)、木曜の時点で「開催できる」もしくは「開催できるという見通しをJRAが持っている」と外部(主にマスコミ)の多くに<思い込ませてしまった>「情報の出し方」についてではないでしょうか。まぁ、マスコミ側の受け止め方に問題があったとも言えますが、木曜の時点で「開催できるかどうかは不透明だが、経過を観察しつつ可能性を残すために出馬投票は行う」というニュアンスをもっと明確に伝えていれば、ここまで反発はなかったでしょう。その意味では、

JRAといたしましては、馬の移動は管理施設間だけに限定し、出走馬の健康状態の把握に万全を期しながら、今週の開催に向けて、出馬投票等の諸準備を進めてまいります。

http://jra.jp/news/200708/081602.html

という玉虫色のまま木曜の会見を押し切るだけのお役所体質が残ってれば、逆にここまでこじれなかったかも、という気もしていたり。なんだか皮肉ですけどね(お役所体質のままならよかった、と言いたいわけでは当然ながらありません、念のため)。


▼と、その件に関しては微妙にJRA寄りの論旨になってますね。小島茂師のブログにシンパシーを感じちゃったからかもしれませんけど。で、

 今回は、有事の際にこそ人間性が出るのだなという思いを噛みしめております。

http://s-kojima-stable.at.webry.info/200708/article_8.html#comment

引用していいものかどうか分かりませんが、その小島茂師のブログについた某競馬ライター氏(一応匿名)のコメントがこれ。なるほど、そういうアプローチもできますね。その文脈からいくと、


JRA競馬中止 : YamanoWeb.com ■山野浩一WORKS■
大井も中止 : YamanoWeb.com ■山野浩一WORKS■
▼このあたりの山野氏の大上段っぷりはなるほどと頷かされるところ。例えば、

いずれにしろ今回の競馬中止は、その後の土川理事長時代への良き転換期になってくれそうに思う

http://yamanoweb.exblog.jp/6745566/

なんてこと、それこそいつも槍玉にあげられてる某ライターさんあたりが同じことを書いたら「何様やねん」の大合唱で袋叩きなのでは。あ、でも今回はわりとしっかりしたことを書いてますね、某ライターさんも。
 あと、

20頭もの発病馬が出て、競馬開催と発表してしまったのは多くの人が異常と思っている。強気な手法は高橋理事長の特徴で、これも理事長の決定と思うし、おそらくJRA内の特に馬事関係から相当な反対もあっただろう。他の競馬主催者や生産、育成、馬術、などはた迷惑を少しでも考えれば届出伝染病の発生馬が隔離されないなどということはありえないと思う。

http://yamanoweb.exblog.jp/6745566/

このへんの記述も突っ込みどころはあるかと。

  • JRAが木曜の会見で「競馬開催」とどれだけ決定的なニュアンスで発表したのか(ネットに出た公式情報では決定的という印象は受けなかった)
  • 推測に推測を重ねている
  • 馬事関係云々については、JRA内部が一枚岩であるなんてこと、最初からありえるはずもない
    • 最終的には「興行主」としての判断基準が全てに優先するのは致し方ないところではないか
    • そういう意味では、前述したように金曜まで決定を引っ張ったのは間違った判断とも思えない
  • 「はた迷惑」<だけ>を考えるだけなら、馬の移動を速やかにJRA施設間に限定した措置でとりあえず隔離になっている(発覚前の移動についてはいかんともしがたい、あるいは別問題であろう)

とはいえ、こういう揚げ足取りではひっくり返ってくれそうにもない(というかもう胡坐で座り込んでいる?)と思わせるなにかを醸し出しているのは、ある種の貫禄なのかも。


▼そういえば、スポニチをホテルのロビーで読んでたら、井上泰司記者が3回連載で「最初の開催決定の判断は歴史的汚点」みたいな論調(超大意)の記事を書いてらっしゃいましたが(ちなみに今日の日曜版が1回目)、その辺もまた人間性なのかなぁと。僕は井上記者のそういうジャーナリスティックな姿勢が好きなので、自分の意見との差異は別にして応援します(えー)。
 当たり前ですが、色んな立場があっていいんですよね。ただ、その立場からであっても物言いの説得力で地金が出ちゃうところはありますけど。気をつけないとなぁ。ぼ、僕は、ひ、ひ、一口馬主なので、ほ、補償が欲しいです(えー


メイショウサムソン凱旋門賞断念 - netkeiba.com

陣営の協議の結果、同レースへの出走を断念することが明らかになった。

http://www.nikkansports.com/race/p-rc-tp0-20070819-243743.html

サムソンは17日の馬インフルエンザの検査で陽性であることが発覚。それでも挑戦に意欲を示していた陣営だったが、松本好雄オーナー(69)との最終協議で回避が決まった

急転!!サムソン凱旋門賞に行く! - スポニチAnnex

17日に馬インフルエンザ感染が判明したメイショウサムソン(牡4=高橋成)が仏G1凱旋門賞(10月7日、ロンシャン競馬場)に向けて調整することが18日決まった。この日午前に遠征断念を発表しながら、午後になって方向転換。馬インフルエンザの症状が表れず元気に調教を積んでおり、日程的にも出走が可能なことから陣営は渡仏へ傾いた。
(強調部は引用者による)

▼混迷してるなぁ。まぁ、ヘッドライン以外の情報が全くないnetkeibaの記事は論外としても、あとのふたつの齟齬は気になります。おそらくニッカンの記事は午前中の取材のみで書かれたのではないか、とか推測は立ちますけど、同記事ではオーナー含めての意思決定と書いてるだけに、そう簡単に覆るかなぁという疑問も。
 ただ、先に書いたようにスポニチは実紙面を読んだんですが、ネットの方では武豊騎手のコメントしか載っていないものの、紙面では師のコメントもちゃんと載ってて、あまり飛ばし記事とは思えない感じでした。
 要するに、陣営としてもまだ揺れに揺れているというのが実際のところなのかなぁと。サムソンが表面上は元気なだけに悩ましいところでしょうね。ただ、陽性馬の扱いについて現場でこれだけ判断に迷うような状況では、JRAが画一的かつ断固たる対処に踏み切れないのも仕方ない面はあるのかな、とも。


松本会長JRAに説明求め直談判へ - デイリースポーツ

理事長か副理事長に、今回の経過、対応の仕方、競馬サークルのいろいろなグループに対する考え方などについて直談判します

▼via馬インフル情報0819 - きりたのホビーナデイズ。(多謝>きりたさん)。サムソンのことだけでも大変そうなのに、全体のことまで・・・・・・お疲れ様です。本業もお忙しいでしょうに。ただまぁ、馬主サイドにとってはそれだけ死活問題という言い方もできますか。一口者としてもささやかながらエールを送らせていただきます。事後対応については、JRAに同情的になる理由は全くありませんしね・・・・・・自己中ですいません。でも、自分の立場からの偽らざる本音です。



▼あと、さっきテレビで自称競馬ファンの落語家が、「馬の薬殺処分なんてことが起きないか心配」(大意)なんてことをのたまってました。JRAは、馬インフルエンザの病理学的な基礎情報の提供にも、もっと力を入れたほうがいいかも。風評被害まで起きかねないですよこの有様じゃあ。


▼軽くとかいって、結局いつもダラダラ書いちゃうんだよなぁ・・・・・・。やっぱり自分のブログで好きに書いてる、という意識がダメなのかも。それなりの場所で書けばまた違うのかな?(謎)