『馬体観測』(あるいは一口馬主に捧げる歌)

午前九時　牧場に 一眼レフを担いでった
カバンに入れたパンフ　父はボリクリらしい

目の前に馬が来た　大袈裟な煽り文句付きで
始めようか　馬体観測　Ｇ１馬を探して

深い沼に飲まれないように　精一杯だった
僕の震える手で　請求書を開けた　あの日は

見えないモノを見ようとして　一眼レフを覗き込んだ
静寂を切り裂いて　いななき声が生まれたよ
社員が僕らを呼んだって　返事もろくにしなかった
「ウマ」というほうき星　僕は一口出資していた

気が付けばいつだって　ひたすら何か探している
胸前の厚みとか　脚元の弱さとか

募集開始から締め切りまで　ずっと探してる
さぁ　始めようか　馬体観測　Ｇ１馬を探して

今まで出資したウマは全部　覚えている
同期の活躍馬を　掴めなかった痛みも

知らないモノを知ろうとして　パンフレットを読み込んだ
暗闇を照らす様な　微かな光　探したよ
そうして知った痛みを　未だに僕は覚えている
「ウマ」というほうき星　今も一口出資している

目が肥えるにつれて　わからない事も増えてった
毎月の請求書も　崩れる程　重なった

僕は元気でいるよ　口座残高は少ないよ
ただひとつ　今も思い出すよ

期待外れのウマを引いて　泣き出しそうな
僕の震える手を　止められなかった　あの日を

見えてるウマを　見落として　一眼レフをまた担いで
新千歳空港の帰り道を　駆け抜けた
そうして知った痛みが　未だに僕を支えている
「ウマ」という　ほうき星　今も一口出資している

もう一度君に会おうとして　一眼レフをまた担いで
前と同じ午前九時　牧場まで駆けてくよ
始めようか　馬体観測　Ｇ１馬にはなれなくとも
「ウマ」という　ほうき星　君をずっと追いかけている

<元曲：http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND12811/index.html>

▼本年もどうぞよろしくお願いいたします。