馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

木曽路は全て山の中、馬産地は大体日高の中

▼先日id:katuryokuさんにいただいたコメントの中に「日高」という表現があって、久々に自分の中であった違和感を思い出しました。確かに馬産地の話をする際には、「日高の」という括りをよく目にします。でも、3回ぐらいしか北海道に行ったことがない自分にとっては、日高というのは結局一体なにを指しているんだ、という疑問がずっとありました。そんな認識もなく競馬ファンやってたのかと言われそうですが、もうちょっと言うと、日高ってのが地理的にどの辺を指してるのか、つまり日高が「どこ」かはまぁ大体分かります。でも実際、北海道の馬産地図を勢力グラフと重ねて頭の中に明確に描ける人ってどれくらいいるの? 「日高」っていう括り方は果たしてそんなに意味があるの? 結局「日高」ってなんなの? と聞き返したいところなわけです。というわけで、以下、(ほぼ自分用の)整理表。


<2004年産中央登録サラブレッド頭数集計・産地別>

日高支庁 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
浦河町 824 18.5% 日高スタリオンS・イーストS/辻牧場・三嶋牧場・杵臼牧場
静内町(現・新ひだか町 708 15.9% レックスS・アローS・静内スタリオンS/千代田牧場
新冠 653 14.6% 優駿スタリオンS/ビッグレッドF・ノースヒルズ
門別町(現・日高町 635 14.2% リーダーズSS・JBBA門別種馬場/下河辺牧場
三石町(現・新ひだか町 374 8.4% スタリオン中村畜産/本桐牧場・ケイアイF
平取町 97 2.2% コアレススタッド・稲原牧場・雅牧場・坂東牧場
様似町 91 2.0% 猿倉牧場
えりも町 30 0.7% エクセルマネジメント(旧えりも農場)
日高支庁 3412 76.5%
胆振支庁 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
千歳市 210 4.7% 社台ファーム
早来町(現・安平町) 204 4.6% 社台SS/ノーザンF
白老町 82 1.8% 社台コーポレーション白老F
鵡川町(現・むかわ町 81 1.8% 西山牧場・上水牧場
洞爺村(現・洞爺湖町 22 0.5% メジロ牧場
追分町(現・安平町) 21 0.5% 追分F
登別市 13 0.3%
穂別町(現・むかわ町 10 0.2%
厚真町 9 0.2%
伊達市 7 0.2%
豊浦町 6 0.1%
苫小牧市 1 0.0%
砂原町(現・森町) 1 0.0%
胆振支庁 667 15.0%
十勝支庁 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
池田町 4 0.1%
大樹町 2 0.0%
清水町 1 0.0%
十勝支庁 7 0.2%
<本州> 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
青森県 60 1.3% 明成牧場・諏訪牧場
福島県 9 0.2%
栃木県 7 0.2%
宮城県 7 0.2%
茨城県 5 0.1%
千葉県 4 0.1%
本州計 92 2.1%
<九州> 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
鹿児島県 30 0.7% テイエム牧場・坂東島繁藤・協和牧場鹿児島分場
宮崎県 5 0.1%
熊本県 2 0.0%
九州計 37 0.8%
<海外> 頭数 シェア 主な種馬場/牧場
アメリ 177 4.0% Winchester Farm
アイルランド 27 0.6%
イギリス 18 0.4%
オーストラリア 12 0.3%
ニュージーランド 5 0.1%
カナダ 3 0.1%
アラブ 2 0.0%
海外計 244 5.5%
総合計 4459 100.0%
胆振軽種馬農協の管轄内だが、胆振支庁には含まれない
※2007/03/14現在・TARGETで集計
※カク地・カク外は除く
※“主な”の基準は一応種牡馬繋用頭数or当該世代の中央登録生産馬頭数の上位からだが厳密ではない



<参考・関連>
http://www.hidaka.pref.hokkaido.lg.jp/index.html
馬文化ひだか:馬を知る:馬の日高史:日本最大の馬産地へ | 日高振興局地域創生部地域政策課
【公式】北海道市場 HBA日高軽種馬農業協同組合
北海道胆振総合振興局のホームページ | 胆振総合振興局
胆振軽種馬農業協同組合
▼馬産地話の文脈において「日高」と言えば、上記表なら「日高支庁管轄の全域」のことを指しているんでしょう。であるならば、生産頭数のシェアで言えば日本の馬産地の8割方は日高、ということになります(上記リンク先の記事では70%前後となっていますが、中央の登録頭数ベースなら既に80%前後)。で、(シェアで言えば1割ちょっとでしかない)社台グループに圧倒されて苦境に喘いでいる日高の生産者、というパブリックイメージは周知の通りかと思いますが、ここで僕はいつも違和感に襲われるわけです。「じゃあ“日高”っていう括りになにか意味はあるの?」と。「日本の馬産が苦境」と書いちゃうと、「でも社台は我が世の春じゃん」という話になるのは分かります。でも、だからって「日高の馬産が苦境」と書いちゃうのは、「一ローカル馬産地の苦境」というニュアンスを言外に含んじゃう気がして納得がいかないんですよね。日高っつったらもう、社台グループを除く日本馬産全部とニアリーイコールじゃねーのかよ、と。じゃあ静内の千代田も新冠ビッグレッドも門別の下河辺もヒイヒイ言ってるのかよ、と(実は言ってたりするのかもしれませんがそれはともかく)。なんでも一緒くたにするなよ、と。自助努力の足りなかった(天運に恵まれなかった、と柔らかく換言しても結局は同じ)雑多な生産者たちの雁首そろえた泣きっ面が、日高の農協なり行政なりの都合のいい看板に使われてるだけじゃないのかよ、と。お涙頂戴っつーかなんつーかとにかく情けないこと言うなよ、と。ざっくり言えばそう思うわけです。
 そしてそれ以前に、「日高」という単位で社台グループに伍しうるような規模・機能を備えたユニオンが果たしてある(あった)のか、という話です。もしもそれがあって、社台グループの台頭に待ったをかけるべく有機的に動いているのであれば、「日高」という括りで馬産地を語るのもいいでしょう。でもそうでないのであれば、「日高」という単位を持ち出すのは、あらゆる意味で無意味なんじゃないの、という風にずっと思ってたんですね。いやまぁ、ずっと、というのは嘘っつーか修辞で、厳密に書くと今回のように何かのきっかけでたまに思い出すぐらいですけど。<追記:あー、そういやHBAってご立派な組合がありましたっけね、こりゃまた失礼しました(棒読み)>
 まぁこれは馬産地経済については全くの門外漢が、JRA-VANのデータだけ弄って思い込んでるド主観ド偏見ですので、一般的な見方とは乖離が激しそうではあります。これもまた、後学のための詳しい人の突っ込み待ちエントリってことで(別に所謂“釣り”をしたいわけじゃありません。あくまで天然です)。



▼競馬ニュース・ブログ界隈では色々と面白そうな(主観)話題が出てるみたいですが、ちょっと週明けから色んな意味でバタバタしてて、他人のネタにきちんと絡めるような余裕がないので、こんなまとめエントリ(しかもちょっと詳しい人から見たら笑止レベルの)でお茶を濁しておきます。いやー、しかし自分の物の知らなさにびっくりした。上の表作ってる間に何度「へー」と思ったことか。