馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

結局は「費用対効果」という概念の捉え方なのかも。

アドマイヤムーンのトレード話から派生したゴドルフィン評価談義について、主に自分用に整理。


須田鷹雄氏の

 地面から金が湧いてくることは確かに凄いことだけど、馬に関する腕となるとかなりビミョーですよ。ゴドルフィンセブンスターズやってる人はよく分かるだろうけど、馬の方で凄いと思わせたのはドバイミレニアムあたりまででしょう。最近は「こんなザマなら生産とセールでの仕入れやめろ」くらいの感じよ。全部現役馬トレードに頼った方がいいんじゃないの、と皮肉のひとつも言いたくなるわけで。

http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=70345&log=20070719

に対して、殿下@殿下執務室の

全体の数を見て多いと思うか少ないと思うかは議論の分かれるところであろうが、大概毎年1頭は質はともかく何がしかのG1を勝ってるんだから、これはこれで生産者或いはセリのバイヤーとして十分な能力であるとは言えるかも知れない。

ゴドルフィンの「馬に関する腕」について。 - 殿下執務室2.0 β1

また、“ひしあまぐり”氏@競馬サロン◇ケイバ茶論の

自家生産馬はおろかセール購入馬もほとんどまともに走っていないのが実状なのである。「ひょっとしてゴドルフィンの現地育成担当部門って、かなりのヘボ?」なんていう噂を聞くようになったのも、昨日今日の話ではない。

http://hirotomi.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_0707.html

に対して、SeaBird氏の

確かにセールで買った馬はあまり名を上げてはいないけど、ここのところの殿下の生産馬やDarley生産馬をなめちゃいけませんぜ? DubawiBernardini 以外では、先月のRoyal Ascotで Silkwood と Boscobel がG2を圧勝したし、Prix de Dianeの勝ち馬 West Wind だって殿下の生産馬。

http://seabird.bblog.jp/entry/387254/

と、それぞれ在野の海外競馬のエロい人から疑義なり反証なりが呈されているわけですが、「今は無き『海外競馬』(東邦出版)はとりあえず一通り持ってる」程度の素養しかない僕としては、いずれの見解もただただ興味深く読ませていただくばかりでした。
 まぁハナっから白か黒かという質の論議ではありませんし、一見黒側(?)に見える須田さんの指摘にしても、どっちかというと「ゴドルフィン軽視論」というより「ゴドルフィン脅威論へのカウンター」ぐらいの意味合いのようにも見えますので、結局どうなんだという話は措くとして。プレイヤーとしてのゴドルフィンなりスルール厩舎なりを語るのであれば、

貴族趣味的な部分があり、トップレベルでそこそこ戦えるのがちょこちょこ出てくれば十分

ゴドルフィンの「馬に関する腕」について。 - 殿下執務室2.0 β1

なのではないか、という殿下(モハメドでないほうの・・・・・・って並び称するのかよ)のご指摘を意識しておく必要はあるのだろうなぁ、と。これをもっとプラグマティックに表現すると、ゴドルフィンはメードンやアローワンス、もしかしたらリステッドぐらいまでも含めたクラスの成績、そしてステークス級の馬にしても一握りのトップクラス以外の成績ってのは、さほど意識する必要性は認めてないんじゃないか、ってことになりましょうか。
 これは趣味云々の話だけではなく、ビジネスモデル的にも言えることでしょう。結局利益追求者としてのダーレー(採算を取る必要があるかどうかは別にして)のキモは種牡馬ビジネスなのであり、その方向で抑えるべきは、いかに血統評価と競走成績を種牡馬価値にリダイレクトするか、という点に尽きるわけです。よって、下級条件戦の成績は言うに及ばず、バリバリのステークス級馬であっても「無駄弾」を打つことは極力避けたがるのではないか、と。そうしたオペレーションが、自然と「叩き上げ」や「数打ちゃ当たる」(あるいはエイダン・オブライエン的な大レース多頭出し)を否定することになり、結果として見た目のレース実績をその投資額やネームヴァリュー(Honour and Glory産駒でないほうの・・・・・・ってもういいって)に比して物足りないものにしてるんじゃないか、という推測は立てられるのではないかと思います。欲しいのはラムタラであってヒシミラクルではない・・・・・・という比喩が、(正確かどうかはともかくとして)分かりやすいかもしれません。
 また、同様の前提に立ってゴドルフィンのトレード資金投下基準を想像するに、高賞金レースに慣れた日本の競馬ファンの尺度とは違った物差しで算出しているのではないか、という点も意識しておくべきでしょう。でないと、単に資金力の差という以上のギャップを目の当たりにし、徒に混乱させられる羽目になりかねない気がします。かくいう僕も、最初に40億と聞いた時はかなり仰天したものですし。


▼ちと話が逸れますが、ちょっと前まではロード・ウイン・サウスニアといった一口馬主クラブ、現在では(旧ユーワも含め)税金対策で競馬やってるような大旦那方(と書いたら失礼かもしれませんが、本気でやっててあのていたらくかよ、とか言うのはより侮辱的でしょう)を抱えておられる藤澤和厩舎ってのは、結構S.ビン・スルールと近いもの(立場にしろ、方法論にしろ)があるのかもしれません。もしそう仮定すると・・・・・・ああ、そりゃ効率悪いわゴドルフィン! なんか今すげえ腑に落ちた! まぁ日本の管理競馬下にある藤澤さんにとっては、メイドンやアローワンスを(本来ステークスを走ってないといけないレベルの馬で)勝ちまくることにもそれなりの意味があるだろう、ってのは大きな違いかもしれませんが。


▼そういえば、ゴドルフィンに続いてクールモアも来るって話もあったかと思いますが(参考:Racing Blog:クールモア、日本上陸? - livedoor Blog(ブログ))、こちらさんのオペレーションってのはゴドルフィンとは大分違うものなんですかね。もし現役時代の「現世利益」をある程度システマティックに追求してくるようなスタンスであれば、こと日本競馬においてはゴドルフィンより余程脅威になりうる存在なのではないかと思うんですけど。エロい方々におかれましては、この辺もいつかタイミングで語っていただきたいものだ・・・・・・というところで、あらゆる意味で投げっぱなして終わります。風邪気味やねん!(誰にキレてるんだ)