馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

若いお母さんは、好きですか?

▼という標題で妙な想像をした人は友達になりましょう反省すればいいと思う。


http://blog.goo.ne.jp/seiyufarm/e/fe3fd8e1d45d619fb42de8ca6148c55e

繁殖も年取ってくると、繁殖成績は落ちるし、健康不安も抱えますからね。

私が馬主だったら、よほどの繁殖成績を持っていない限り、13歳以降に生んだ産駒には手は出しませんけどね。走る確率の高い産駒を生産しようと思ったら、やぱり若いうちに入れ替えてかなきゃダメですね。

▼呼ばれてもいない単なる一口馬主が来ましたよ。
 えー、これが要するに淘汰というか、繁殖入れ替えの新陳代謝を活発にしろっていう意味ならわかりますけど、これだけだと単純に「高齢出産の産駒は走らない」っていうふうに読めちゃいますね。まぁそういう感覚が馬産地なりオーナーサイドなりに膾炙している(あとなんかそれっぽい研究結果もあったはず)というのは否定できないところですけど、印象論だけでは納得いかない性質なので、以下自前で出せるデータを。


<母出産年齢別競走馬成績>

  • 2008/01/20終了時点までのデータ、TARGETで集計。
  • 【重要】データ検索の都合上、母がJRA-VANの「競走馬データ」に登録されている馬のみが集計対象。
    • すなわち、母が中央未登録だったり、海外から導入された繁殖牝馬の仔やマル外は集計対象外。
  • 母出産時年齢について、若年側を6歳以下、熟年側を16歳以上に設定したのは、概ね世代全体の分布端部10%までぐらいで、なるべく極端なデータを採ろうと思ったため。
  • 方法は、世代全馬抽出→当該母馬リスト出力→リストファイル読み込み→年齢別にソート・抽出→「検索:全牝馬の産駒一覧」で出力→戦歴検索、という手順。

2000年産 母6歳まで 母7〜9歳 母10〜12歳 母13〜15歳 母16歳以上
出走頭数 402 807 692 398 206
勝馬頭数 145 292 240 120 56
勝馬 36.1% 36.2% 34.7% 30.2% 27.2%
1頭当賞金 1746万円 1651万円 1556万円 1036万円 884万円
代表馬 リンカーン
(母6歳時)
アドマイヤグルーヴ
(母7歳時)
オレハマッテルゼ
(母10歳時)
サクラセンチュリー
(母13歳時)
ミヤビペルセウス
(母18歳時)
2001年産 母6歳以下 母7〜9歳 母10〜12歳 母13〜15歳 母16歳以上
出走頭数 452 877 668 425 235
勝馬頭数 151 332 242 113 54
勝馬 33.4% 37.9% 36.2% 26.6% 23.0%
1頭当賞金 1519万円 1665万円 1549万円 1155万円 740万円
代表馬 スズカマンボ
(母6歳時)
スイープトウショウ
(母8歳時)
ハーツクライ
(母11歳時)
ダイワメジャー
(母13歳時)
メジロベイシンガー
(母17歳時)
2002年産 母6歳まで 母7〜9歳 母10〜12歳 母13〜15歳 母16歳以上
出走頭数 453 892 700 429 253
勝馬頭数 146 345 243 128 64
勝馬 32.2% 38.7% 34.7% 29.8% 25.3%
1頭当賞金 1182万円 1528万円 1238万円 1065万円 1097万円
代表馬 メイショウトウコン
(母6歳時)
ラインクラフト
(母9歳時)
スズカフェニックス
(母10歳時)
メルシーエイタイム
(母13歳時)
サンライズバッカス
(母16歳時)
▼・・・・・・さて、この数字の差をどう見るか。まぁ、平均すれば年食ってるよりは若い母の方がいい、ということはほぼ間違いなさそうです。
 ただし、だからといって高齢出産の産駒成績が絶望的なものかというと、決してそんなこともない気がします。よって、ひたすら高齢出産馬を避けていけばアベレージが劇的に上がるか・・・・・・と聞かれるとなんとも。一口界隈でも、インティライミ(母16歳時)やマイネルレコルト(母17歳時)なんかがいるわけですし。また、データ的に完結性が低いと思われるので出さなかった現4〜5歳世代に目を向けてみると、母6歳時以下での産駒だとメイショウサムソンとかローレルゲレイロとかがいる一方、母16歳時以上だとあのダイワスカーレットキストゥヘヴンなんかが該当したりもします。うーん、悩ましい。


▼ちなみに上記集計対象外の馬では、アベレージを出すのは大変なのでやりませんが(誰かやってくれる勇者募集)、例えばピンクカメオは母19歳時の仔ですし、一口界隈では手前味噌ながらブルーメンブラットが母17歳時の仔。他にも、ボクドウ氏が「避ける」とした13歳以上での出産仔の活躍馬まで含めると枚挙に暇がなく、2000年産以降だけでも、

てな感じにずらずらと重賞級が出てきます(参考までに兄姉の出世頭を併記しておきましたが、このへんが“よほどの繁殖成績”に値するかどうかは各自の判断にお任せします)。


▼とりあえず統計的に明確に言えるのは、例えば母16歳時以上などという高齢出産は中央登録産駒全体の10%にも満たないような特殊例*1であり、その層からコンスタントに活躍馬が出ないのは当たり前だろう、ということ。健康管理の難しさ、といった意味での牧場の評価はともかく、一旦市場に出てきている馬について母の年齢だけで評価を下げるのは非常に疑問が残ります。もちろん、高齢でありながら繁殖を続けている以上、ある程度の実績や期待感が掛けられている場合が多いでしょうし、それが価格に転嫁されているようなら考慮する必要はあるでしょうけど。
 そんなわけで、比較するなら高齢母馬はなるべく避けたほうがベターという傾向は認めつつも、購買側(馬主)から見ると、「結局実馬次第では」というのが身も蓋もない個人的な結論。まぁ判断の分かれるデータであることも確かですし、声高に主張する気はありませんけど。
 ただし生産者側からすると、アベレージを上げるためにも積極的な血統更新が必要なのは間違いなさそう。となると結局体力勝負、富の集中がますます進むのは至極当然・・・・・・というのもまた、身も蓋もない結論。格差社会だなぁ。

*1:中央での競走馬登録をしている馬で、その母も同様に中央登録がある馬は、概ね世代で3000頭前後