馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

誰のためのハンデ?

▼勢いでもうひとつ。武豊公式の日記での、ハンデ(キャッパー)に対する批判記事。


30代最後の1年、これまで通り一戦一戦を大事に - 武豊オフィシャルサイト

レース前から55キロのハンデが見込まれ過ぎなのではないかと思ってはいたのですが、あくまでも前向きに「ハンデキャッパーの目が正しければいいな」と考えるようにしていたのですが、レース後はやっぱりそこに敗因を求めたくなってしまいます。だって、オープン入り初戦で2着したとはいってもそのときが53キロ。勝ったわけでもないのに2キロ増というのは、長い騎手生活でも経験がありません。釈然としない気持ちを夜まで引きずってしまいました。

これに対して、


[RBN] 武豊がハンデキャッパーに苦言

確かに55キロはハンディを背負わされたと思うけど出走馬のメンツを見ると仕方がないかと。ハンデキャッパーはその馬だけをみて斤量を決めるのではなく、出走馬全体をみて斤量を決める。
(中略)
武豊にとっては兄弟子の河内洋厩舎の馬なのでなんとしても自分の手で重賞を勝たせてあげたいと言うのはわかるが、注目度の高い自分の日記に「今回ばかりは、ハンデ戦のあり方について、本当に考えてしまいました。ファンの皆さんのご意見も伺いたいところです。」と書いてしまうのはどうかと。

▼というRBNさんの見解に概ね同意。ハンデというのは相対的なものであり、「そのレースで発揮されると思われる各馬のパフォーマンスの差分をいかに埋めるか」という目的のみを追求して付けられるべきものです。JRA公式にも、ハンデ戦は“出走予定馬の実績や最近の状態などを考慮し、各出走馬に勝つチャンスを与えるよう決められた重量を負担させるレースです。”と、ちゃんと明記してある。
 例えば55キロというハンデは、「その馬の前走がオープンで2着だった」という「結果」から求められたものではなく、そのレースの勝ち馬の評価や走破時計、果ては展開の有利不利や状態面まで勘案した上で求められた数字のはず。そしてその斤量(差)は「勝つべき馬が勝つ、という予定調和を崩すため」のものなわけで、武豊の「釈然としない気持ち」というのは、控えめに言っても単なる不平、管を巻いているだけにしか聞こえません。
 そういう意味では、RBNさんの

重賞を勝っているアルコセニョーラが54キロなので、これよりも重たいのはどうかと思ってしまった。

http://blog.racing-book.net/archives/2008/03/post_2330.html

という感想も、気分的には理解できますが、やはりハンデ戦というもののそもそもの性質を考えれば、理屈の上では問題にならない部分だ、ということになるでしょう。
 ちなみにレース結果はこちら。

勝ったヤマニンメルベイユから11着のアルコセニョーラまでが、0.8秒差。「ハンデ戦らしい」結果と言えるのではないでしょうか。まぁもしそうはならなかった場合でも、糾弾すべきことがあるとすればそれは「ハンデキャッパーの手腕」であり、「ハンデ戦(という制度)のありかた」ではないのは明白でしょう。


▼そもそも「ハンデ」なる制度が一体誰のためにあるのかということを突き詰めて考えれば、それは馬やホースマンのためではなく、「馬券(を買うファン)」のためではないか、という思いがあります。これはハンデ戦の起源や歴史を考慮しての話ではなく、単なる印象論です。しかし、普通のスポーツ競技は概ね公平性を担保するか、そうでなければシード権のように「強者のパフォーマンスを妨げない」方向性でルール付けするもので、「強者のパフォーマンスを阻害する」という発想は、ギャンブルスポーツならではじゃないでしょうか(違ったらすいません)。
(追記:よく考えたら、“一般的に、一番大きい負担重量の馬(トップハンデ馬)を最初に決め、そこから順次出走登録各馬の負担重量を決めていく”viaハンデキャップ競走 - Wikipediaという手法を考えれば、「強者のパフォーマンスを阻害する」という言い方は正確さを欠くかもしれません。まぁそれでも論旨の大勢に影響はありませんが・・・・・・)
 もしその論旨展開がズレていなければ、競馬というギャンブルスポーツにおいて強者側のプレーヤーがハンデ戦に対してイチャモン付けるという行為は、とりもなおさず「自分の立ち位置を全く理解していない愚行(愚考)」だ、と断じることができる気がします。敢えて単純化して煽るなら、「そのハンデに文句があるなら出るな」で済む話ではないかと。
 まぁ、「あの」武豊のことですから、ハンデキャッパーへのブラフというか、プレッシャーというニュアンスなのかもしれませんが、それでもなお、RBNさん同様“どうかと思う”ところではあります。


▼以上、これも酔った勢いで書いてるので首尾一貫してるかどうかよくわかりませんが、とりあえずアップ。