馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

『ネイティブダンサー』(サカナクション)は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの夢を見たか?

シンシロ(通常盤)

▼最近の通勤時にヘビーローテな一曲。聴くきっかけはというと、まぁ競馬者なら説明するまでもないでしょうということで。シングルカットはされておらず、アルバム『シンシロ』所収の一曲。
 バンドは北海道出身らしいですけれど、「灰色の幽霊」の方のNative Dancerを意識してつけた曲名かは不明。強いてこじつけるなら、歌詞の季節設定が冬で、全体的な色調が灰色めいているような気はしないでもありません。
とはいえ普通に考えれば、サビ部分の“そういう気になって”“揺れた”ことを示す言葉が『ネイティブダンサー』だったんだろう、とは思いますが。


 “忘れた”“立ち止まったまま”“冬の花”とネガティブワードが並ぶ「起」のAメロは、低音・低温のピアノがリードして平坦に低空飛行。「承」のBメロに入るとすぐ、“僕はいたって最後方 思い出したのは辛いこと”と「いまいち意味はわからんが、とにかく凄いネガティブさだ」というフレーズにますますダウナーな気分になりかけるも、音の方は手拍子とストリングスが入って多少アッパー加減に。メロディへの言葉の乗せ方もキャッチーで、これはただの鬱ソングじゃないな、と自然に引き込まれつつ、「転」のサビ部分へ。
 ここで一気に打ち込み系シンセが前面に押し出され、同時にボーカルのファルセットで灰色一色だった色調がホワイトアウトします。

淡い日に僕らは揺れた ただ揺れた そういう気になって
思い出のように降り落ちた ただ降り落ちた そう雪になって

歌詞だけではなく、硬質ながらもどこか包みこむような湿度を感じさせる声がしんしんと降り積もる雪を連想させて、心地よく作品世界に浸ることができます。曲の世界観としては一貫してダウナーなままで、なんのことはない、八方塞がりな状況に対してただ開き直ってしまっただけという見方もできそうですが、変に救いや解決を求めるわけではないというのが、逆に癒される気がしてなりません。ああ、このまま無為でいいんだ、みたいな。別に歌の中で肯定的な表現があるわけではないんですけど、なんとなく“そういう気になって”しまうというか。どことなく今の季節感や最近の自分の心情にマッチしていて、つい何度も聴いてしまっている、そんな曲です。


▼あ、曲とは直接関係ないんですが、「雪」「降り落ちた」「立ち止まる」「幽霊」(←これは勝手に曲名から連想しただけ)というキーワードが並ぶと、ついこの文章を連想してしまいます。

 空から白いものが落ちてきた。たくさんの、小さな、不安定な、水の結晶。それらは地表に落ちて消えゆく。
 時空にあふれている奇蹟の一つだった。この世界には奇蹟がありふれている。私はずっと立ち止まっていた。時間の経過は意味をなさなくなっていた。
 綿を連ねるような奇蹟は後から後から降り続く。
 これを私の名前としよう。
 そう思い、思ったことで私は幽霊ではなくなった。
涼宮ハルヒの憤慨』(P87)

つまり『ネイティブダンサー』は、『アルエ』(BUMP OF CHICKEN)が綾波レイへのそれであるように、長門有希というキャラクターへのアンサーソングだったんだよ!(な、なんだってー

ロックバンド・BUMP OF CHICKENの楽曲『アルエ』は、綾波レイに一時本気で恋したボーカルの藤原が、イニシャルのR.A(アールエー)を曲名にとり作詞作曲したものと発言している。