「Haloクロス」の効果を調べてみた。(第5回・返信&再質問編)
- 「Haloクロス」の効果を調べてみた。(準備編) - 馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)
- 「Haloクロス」の効果を調べてみた。(第2回・種牡馬別編) - 馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)
- 「Haloクロス」の効果を調べてみた。(第3回・質問編) - 馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)
- 「Haloクロス」の効果を調べてみた。(第4回・回答編) - 馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)
▼の続きです。
「Haloクロス」という要素「だけ」が単独で
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
- →「だけ」取り上げてもダメだよ!
もちろん、まだまだデータ的に色々な切り口が取りうるでしょうし、「血統論」「配合論」に明るい方には様々なご意見もあることでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
- →統計玄人/血統玄人の俺が来ましたよ!
「Haloクロスの効果が云々」と軽く言ってくれるような向きには、「データの採り方はなるべく多面的に行なったほうがいいですよ」と僭越ながらご助言差し上げたい
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
- →俺は「軽く」言った覚えはない! ちゃんと多面的に調べた!
……と、これだけ書けば、おそらくそういう「親切な血統(あるいは統計)の先生」が現れてくれるだろう、と期待していました。
▼まず、Twitter経由でのご指摘。これはtogetterの方でまとめさせていただきました。
特に笠先生のツイートの方は、色々調べながらじっくり読み込まないと理解できそうにないので、今後の宿題ということにさせていただきます。機会があれば、またTwitter上でご指南いただければなと。あ、引用自体に問題があればすぐ対応いたしますのでお手数ですがご一報お願いいたします。
▼こちらはブログ経由から。正直に言って、hyraco氏のエントリはTwitter経由で紹介していただき、意識していました。ただ、「あまり目立ちたくない」というお話だった上に、エントリを読ませていただいても非常に重厚な調査をされていることはうかがえるものの、血統素人の僕にはすんなり頭に入ってこない点が多かったので、なんとか具体例を挙げながらご指南いただけないかな、と考えていました。実際、内容としては非常に丁寧にご回答いただいているようでありがたい限りです。
以下の引用文は、特筆しない限りこのエントリからのものです。
だいたい5代以内のインブリードってのは、単純なグロスで普通ここまでプラスの効果出ないんだよ。特に芝では。
だからHalo近交をわざわざ取りあげたんじゃねーか。
▼“5代以内のインブリードってのは、単純なグロスで普通ここまでプラスの効果出ない”。なるほど、それは勉強になりました。今回は「Haloクロスの<有無>」という点にだけ絞った調査ですの意識しませんでしたが、今後はもう少し複眼的にやってみたいと思います。とはいえ「Halo近交は特別」ということをご指摘いただけただけでも大きな収穫でした。
賞金やすいのがイヤなら最初から芝馬えらべばよくね?芝馬の2/3以下のやっすいダート馬えらべばよくね??
▼まさにその通りです。特にPOG期間だけでは終わらない自分のような一口者にとっては、コストパフォーマンスという要素はとても大切で、その向上のためには当然そうした選択も意識します。たとえ賞金格差が激しくても、勝ち上がりが見込めて、価格がリーズナブルで、つぶしがきいて、長く堅実に走ってくれそうで……といった判断ができるようであれば、積極的にダート馬を狙う価値は十分あるかと。なのでわざわざ、
一口馬主としての僕のスタンスからすれば、「割高なサンデー系を選ぶよりは、良質な繁殖牝馬から地味でも出来がいい非サンデー系を選んだほうがアベレージ的にいいかな」とさえ思います
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
と書いておいたんですが……(注:サンデー系が総じて割高、とみなしているわけではありません、念のため)。
「ダートの賞金1.5倍」は、<純粋に繁殖牝馬の質を測る>ためには意味があると思ったことも当然ありますが、
(2004〜2007年産について集計)
という逆転現象をどう把握するか、という面も考慮した上でのことです。
どうみても結論ありきです
という指摘はごもっともで、一見するとそう読めるように(賞金格差の問題を大きく)書いたのは確かです。そして一方で、
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
- 全く競走能力が同じと仮定すると、芝馬とダート馬では前者が獲得賞金で、後者が勝ち上がり率でそれぞれ優位になるという傾向を、中央競馬の構造自体が担保している
とも明記していること、つまり、前述の「勝馬率の逆転現象」に対する説明にもなっている点を読み取ってもらえるかどうか、ということは意識していました。所謂「釣り」の形を取ったことは品がなかったかと反省しています。
あと、コストパフォーマンスという筋で言うと、
- 1頭当出走数:Haloクロス馬兄弟(Haloクロスなし)9.43 >> 非サンデー系全体7.89 > サンデー系全体7.76 > サンデー系(Haloクロスあり)7.43
- ※現3歳馬を除いて集計→1頭当出走数:Haloクロス馬兄弟(Haloクロスなし)10.31 > サンデー系(Haloクロスあり)9.35
- ※現3歳馬のみ集計→1頭当出走数:Haloクロス馬兄弟(Haloクロスなし)6.25 > サンデー系(Haloクロスあり) 5.42
(2004〜2007年産について集計)
というデータも重要です。多分これは、サンデー系クラスタの方が上級クラス馬が多そう(=出走数が減りがち)なことや、一般論として芝の連戦が効きにくい、みたいな要素が大きいのではないかと思いますが(注:この仮説の根拠となるデータはまだ調べていません)、それにしてもこれだけの差がつくと無視できないものがあります。ちらっと「濃いインブリードの弊害」なのかな、とも思いましたが、そう断言するためには膨大な調査が必要と思われますので(それこそ調教師ごとの傾向まで調べないといけない)、尻込みしています。山内厩舎に入るのと萩原厩舎に入るのではえらい違いですから……。
- 芝勝率:全Haloクロス馬(10.5%)>全SS系(8.1%)>全Haloクロス馬の兄弟馬(6.9%)>全非SS系(6.7%)
- 特別勝率:全Haloクロス馬(13.0%)>全SS系(8.5%)>全Haloクロス馬の兄弟馬(8.5%)>全非SS系(8.2%)
▼単に勝率の多寡を全体と比べる、という比較であれば、「繁殖牝馬の質」という視点をもう少し踏み込んでご説明いただきたいところ。
- 勝馬率:母サンデー系38.3% > 母にHaloの血を持つ全産駒(母サンデー系除く) 36.9% > 世代全体31.6%
- 勝率:母サンデー系9.2% > 母にHaloの血を持つ全産駒(母サンデー系除く) 8.3% > 世代全体7.3%
- 1頭当賞金:母サンデー系1,304万円 > 母にHaloの血を持つ全産駒(母サンデー系除く) 1,125万円 > 世代全体989万円
(2004〜2007年産について集計)
これだけ大雑把に取ってもこれだけ現れる格差を、「クロス(あるいは擬似クロス)」という要素で説明しきれるものなのでしょうか。
▼メモれ、と言われた部分です。ご親切にありがとうございます。特に1番目のご指摘は、自分の血統勉強の次のステップに重要な示唆をいだたいたものと思います。
2番目に関しては、あまりにも分母数が違いすぎるので、全体に含めてしまったとしても底上げ効果は薄いものと判断していましたが、手間を惜しんでしまったという面は否めませんね。
3番目に関しては、ソースとして挙げていたTARGETの集計画面(例↓)
に芝/ダート別の成績は出ているのでいいかなと思ってしまいました。
この人が高齢母の調査したとき(中略)、
ぜんぜんちがう角度から、統計的に有効とおもわれるキイをさがしだし「連産リズム理論」としてまとめただろ?
▼おっしゃる通りです。あのエントリは僕にとって目からウロコでした。
俺らは結果をみまもり、まちがってたらまたもどる。でも、新しい見方に到達することをあきらめない。
▼これもおっしゃるとおり。ですので、
これらのデータだけで血統論・配合論をまるごとオミットする意図は全くありません。ていうか「サンデー系は芝優位」みたいなデータはこのエントリ群内でも十分出ているわけで、その辺は十分認めていますし、そういった傾向の組み合わせという文脈で考えれば、ある種のニックス関係も成立しうると思います(今のところエビデンスはありませんが)。
http://d.hatena.ne.jp/Southend/20100817/p1
という締めにさせてもらいました。その後の煽りについては、まぁ(主に)みっちー@スペ基地さんすいませんってことで。
▼最後に、また新たな質問で終わりたいと思います。特にどなたがお答えいただいても構いません。
Haloの血を持つ繁殖牝馬(※サンデー系を除く)の産駒成績・種牡馬別集計
- 2010年8月18日TARGET調べ
- 2004〜2007年産限定
- 頭数は出走頭数
- 平地競走のみ集計
- 対象産駒が10頭以上いる種牡馬について集計
- ただしサンデー系+Haloクロスができる種牡馬については5頭以上で集計に含む
- 「分母内AEI」の分母は一番下の1,125万円/頭
- 「2008〜2010AEI平均」のソースは競馬ブックwebより
- 「格差」は「分母内AEI」を「2008〜2010AEI平均」で割った数字
- 母父サンデー系を除外した理由は、当たり前ですが父SS系のデータを重視するため
- サクラバクシンオー産駒には、マル外のエーシンビーエルを含む
種牡馬 | 賞金合計 | 頭数 | 勝馬 | 1頭当 賞金 |
勝馬率 | 分母内 AEI |
2008〜 2010AEI 平均 |
格差 | SS系 | Halo クロス |
クロフネ | 57666 | 34 | 16 | 1696 | 47.1% | 1.51 | 1.24 | 1.22 | ||
シンボリクリスエス | 53650 | 21 | 11 | 2555 | 52.4% | 2.27 | 1.19 | 1.91 | ||
キングカメハメハ | 24386 | 20 | 15 | 1219 | 75.0% | 1.08 | 1.49 | 0.73 | ||
マンハッタンカフェ | 61085 | 16 | 11 | 3818 | 68.8% | 3.39 | 1.36 | 2.50 | ◯ | ◯ |
マイネルラヴ | 15172 | 16 | 5 | 948 | 31.3% | 0.84 | 0.79 | 1.06 | ||
アグネスタキオン | 23135 | 15 | 8 | 1542 | 53.3% | 1.37 | 1.56 | 0.88 | ◯ | ◯ |
アグネスデジタル | 3980 | 14 | 3 | 284 | 21.4% | 0.25 | 0.95 | 0.27 | ||
スペシャルウィーク | 9430 | 13 | 4 | 725 | 30.8% | 0.64 | 1.14 | 0.57 | ◯ | ◯ |
ネオユニヴァース | 54810 | 12 | 3 | 4568 | 25.0% | 4.06 | 1.14 | 3.56 | ◯ | ◯ |
ブライアンズタイム | 29975 | 12 | 10 | 2498 | 83.3% | 2.22 | 1.23 | 1.81 | ||
ジャングルポケット | 3021 | 12 | 1 | 252 | 8.3% | 0.22 | 1.42 | 0.16 | ||
サクラバクシンオー | 38628 | 11 | 9 | 3512 | 81.8% | 3.12 | 1.19 | 2.62 | ||
ファルブラヴ | 5535 | 11 | 2 | 503 | 18.2% | 0.45 | 0.93 | 0.48 | ||
キングヘイロー | 13126 | 10 | 4 | 1313 | 40.0% | 1.17 | 0.95 | 1.23 | ◯ | |
ダンスインザダーク | 7139 | 10 | 5 | 714 | 50.0% | 0.63 | 1.04 | 0.61 | ◯ | ◯ |
マヤノトップガン | 5415 | 10 | 3 | 542 | 30.0% | 0.48 | 0.91 | 0.53 | ||
ティンバーカントリー | 1539 | 10 | 0 | 154 | 0.0% | 0.14 | 0.67 | 0.20 | ||
フジキセキ | 20885 | 8 | 4 | 2611 | 50.0% | 2.32 | 1.36 | 1.70 | ◯ | ◯ |
アドマイヤベガ | 3721 | 6 | 1 | 620 | 16.7% | 0.55 | 2.47 | 0.22 | ◯ | ◯ |
Fusaichi Pegasus | 12870 | 5 | 3 | 2574 | 60.0% | 2.29 | 1.53 | 1.50 | ◯ | |
バブルガムフェロー | 10825 | 5 | 4 | 2165 | 80.0% | 1.92 | 0.78 | 2.48 | ◯ | ◯ |
マーベラスサンデー | 3915 | 5 | 1 | 783 | 20.0% | 0.70 | 1.06 | 0.65 | ◯ | ◯ |
ニューイングランド | 3024 | 5 | 2 | 605 | 40.0% | 0.54 | 0.93 | 0.58 | ◯ | ◯ |
母にHaloの血を持つ 全産駒(母サンデー系除く) |
805536 | 716 | 264 | 1125 | 36.9% |
- なぜ同じサンデー系でもマンハッタンカフェ・ネオユニヴァース・フジキセキ・バブルガムフェローは成績が良く、アグネスタキオン・スペシャルウィーク・ダンスインザダーク・アドマイヤベガ・マーベラスサンデー・ニューイングランドは成績が良くないのか。
- 特に後者の成績不良グループについて、単なるデータ不足による揺らぎでこうなっているが、理論上はHaloクロスの恩恵を大きく受けるはずの種牡馬はいるのか。
- そうではなく、もし自身の血統構成あるいは母系とのマッチングの問題であるなら、その要件はどんなものか。
- 特に後者の成績不良グループについて、単なるデータ不足による揺らぎでこうなっているが、理論上はHaloクロスの恩恵を大きく受けるはずの種牡馬はいるのか。
- Haloクロスの話からは離れるが、シンボリクリスエス・ブライアンズタイム・サクラバクシンオーの成績が極端に良いことに、血統背景からのなんらかの理由付けができるか。
- キングヘイローのように、ロージズインメイやバゴ、ムーンバラッドも今後プラス効果が現れるか。
……と、こんなところで今回はお開きにしたいと思います。