馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

▼どこのどなたかわかりませんが、こんな場末のブログの前回のエントリにご丁寧なツッコミを頂いたので、返答にひとつエントリ起こしてみます。お題は「一口馬主の収支計算」。実例として不肖私のケースを公開してみます。



<前提>

  • 4つのクラブに入会。
  • うち2つは400分の1口から、もう2つは500分の1口からの出資が可能。
  • ただし出資口数は全て1頭当たり1口。
  • 今年の年初時点での現役出資馬頭数は55頭(ぐらい)。
  • ただし、現在募集中の2歳馬への追加出資や再ファンド前提で地方で走っている馬の復帰などで、65頭程度までは増える可能性大。
  • しかし、当然現在現役の馬の引退も相当数見込まれるため、年間で平均すれば大体常に60頭前後の出資馬がいる、とみなす。
  • 前回のエントリで立てた目標(というか皮算用)を前提に、各シミュレーションをしてみることとする。

<支出>

  • クラブ会費

 僕の入っている4クラブは全て月3150円(税込)。よって、

3150円×4×12ヶ月=15万1200円

  • 維持費

 毎月実費精算しているところもあるようですが、大体1頭あたり月60万円掛かるものとしてみなし徴収し、馬の引退時に実費を計算して精算(大体の場合は余剰金が出て出資者への返還が発生する)するところが多いです。僕の入っている4クラブでは、ひとつだけ月48万円計算しているところがありますが、引退時精算なのは全部一緒ですし、面倒なので月60万ということで計算します。あと、最低出資単位が400分の1口と500分の1口のクラブに分かれているのも、面倒なので500分の1口ということで計算します。よって、

60万円÷500口×60頭×12ヶ月=86万4000円

  • 保険料

 高齢馬や障害馬を除き概ね加入している、競走馬保険の更新時(年1回)に、保険料の支払いが発生します。これは出資金額×一定の掛け率(馬齢などで決まる)という計算で額が決まるため、請求されてみないといくらになるかよく分かりません。

昨年の請求額が40000円ぐらいだったので、見込みで=60000円


以上、支出合計・・・107万5200円



<収入>

  • 賞金配当

「本賞金(1〜5着)or出走奨励金(6〜8着・重賞など例外あり)+付加賞+距離割増賞・父内国産馬奨励賞・内国産馬奨励賞・市場取引馬奨励賞といった各種手当」から、「源泉所得税+進上金+営業経費(クラブ手数料)+消費税+ご祝儀(重賞を勝った場合)」が控除された額を、所有口数で割った額が、概ねレースのあった翌月の末に振り込まれます。
(詳細はhttp://www.joy-rh.co.jp/general/guide/prize.phpあたりを参照のこと)
賞金のうち2割は進上金なので、8割は馬主のものですが、上記のように色々と控除されるので、実際に振り込まれる額の目安は大体本賞金(出走奨励金)の65%前後と考えるといいでしょう(少なくとも僕の入っているクラブではそれぐらいです)。ただ、最近減額されているとはいえ、各種手当はなかなか馬鹿にならないものがあり、馬の選び方次第ですが、平均すれば獲得本賞金+出走奨励金の70%近いバックがあると考えても良いかもしれません。
 今回は、獲得本賞金が皮算用通りに年間50000万円あったとしてみます。本賞金は1着本賞金額を100%とすると、2着40%・3着25%・4着15%・5着10%。一方出走奨励金は6着7%・7着6%・8着5%。100+40+25+15+10=190で、これが50000万円と仮定すると、期待値では出走奨励金は(50000万円÷190)×(7+6+5)=約4700万円程度はあると予測できます。各種手当ては今回基本的に考えないこととし、また出資口数も一律500分の1口と計算します。よって、

54700万円×65%÷500口=71万1110円(+α)

  • 特別出走手当

 出走するだけでJRAからもらえるお金。もらえる条件や金額は上記リンクを参照してもらえばOKですが、大体35〜40万円です。500口で割れば1走あたり700〜800円程度ですが、これが積もり積もると馬鹿になりません。
 これは、随時(毎月)精算のところと、プールして引退時精算のところがあり、後者が主流ですが、ここは便宜上賞金配当と同様毎月精算があると仮定して、皮算用通り年間250回出走があったとして計算してみます。よって、

35万円×250走÷500口=17万5000円

  • 引退時精算

 出資馬が引退した場合、JRAから支給される見舞金、地方に転出する場合はその売却代金、牝馬で繁殖に上がるなら牝馬買戻し金、といった各種収入が配当されます。無視できるほど小さい金額ではありませんが、種牡馬にでもならない限り、これをアテにできるほど大きな金額にもなりません。よって、ここではスルー。



以上、収入合計・・・88万6110円



<収支>

  • 収入合計88万6110円−支出合計107万5200円-18万9090円

 と、なんと60頭で年間5億稼いでも、これだけマイナスが出ちゃうんですねー。こりゃダメだ・・・・・・と思いそうになりますが、あにはからんや。これぐらい出資馬が稼いでくれれば、実質のランニングコスト収支は大体トントンにまで来ているんです。というのも、毎月の「維持費」、これは便宜上、月60万円と計算しているわけですが、実際はそんなに掛からないことがほとんど。で、前に書いたことの繰り返しになりますが、多くのクラブは会員から預かった維持費と実際に掛かった預託料の差額を、その馬の引退時に精算します。つまり、大体それは余剰金となって会員に返ってくるんですね。
 では、実質の預託料というのは一体どれぐらいなのかというのを、これまで僕が出資した馬の実例で挙げると、

  • 出資馬A(10戦3勝・実働34ヶ月)・・・1479万0960円→1ヶ月あたり約44万円
  • 出資馬B(1戦0勝・実働21ヶ月)・・・ 896万9407円→1ヶ月あたり約43万円

という感じになります。育成牧場にいる期間が長いとより安くなる(牧場よりトレセンの方が預託料が断然高いため)傾向があるため、在厩期間の短かった上記2頭はかなり安価に済んだ方ではありますが、平均しても、概ね月60万円計算の維持費の80%前後ぐらいしか、実際の預託料は掛かっていないのです。よって、年間86万4000円支払った維持費のうち、大体16〜20万ぐらいは、最終的には戻ってくると考えていいわけです。
 そうすると、見た目の年間赤字19万というのは、ほぼ消えてしまいます。計算に入れなかった、距離割増などの各種手当を含めれば、多分わずかながらプラスが出るのではないでしょうか。
 まぁこれは逆に言えば、4クラブ60頭(口)で年間5億稼いでも、ランニングコストだけでほぼチャラ(つまり出資金は全く回収できない)という厳しい現実がある、ということでもあります。なにしろ本賞金で5億稼げる厩舎というのは、全体の1〜2割程度ですからね。投資としては割に合わないことこの上ないです。しかも、やれ現地応援だの記念に専門紙を買うだのといった応援雑費が結構馬鹿になりませんし。まぁ結論としては、投資と考えて回収を期待したい奴は、一口ではなく株でもやれってことでしょうか。



▼以上のシミュレーションが、少しでもこれから一口をやろうとしている方の参考になれば幸いです。ああ、疲れた。