馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

生産者が近視眼的なのは日本に限ったことじゃない、とはいえ。

▼今週のブックのリチャード・グリフィスのコラム『権勢を振るうダンチヒ系−欧州血統事情』が興味深かったのでちょっと抜粋。

06年で見ると、英国とアイルランドで種付けされた繁殖牝馬の約25%は、ダンチヒ系の種牡馬に種付けされている。その数3250頭。そのうち1900頭はデインヒルUSAの子、もしくは孫に種付けされており、800頭は別のダンチヒの産駒グリーンデザートの子もしくは孫に種付けされたのだ。

▼ま、デインヒル系への偏向というのはちょっとでも欧州競馬に興味がある人なら(サイアーランキングで)誰でも気付くことであり。ただ、種付頭数についてのこうしたデータが出たので、改めて日本と比べてみようかと。親データは2006年度 主な種牡馬の種付け頭数(種付け頭数順、156頭、改訂版) - 馬市ドットコムでいきます。分母数は・・・・・・データが見つからないんですが・・・・・・JBBAのデータによると2005年度のサラブレッド生産頭数が7967頭なので、便宜上8000頭ぐらいにしておきます(実際はもっと少ないでしょうけど)
<訂正>
種付け頭数と生産頭数を混同しちゃってたorz 親データの種付け数をトータルすると大体11000頭ぐらいになるので、それを分母に訂正して、以下の数字もそれに準じて全部訂正。

 で、かなり大雑把に集計してみると、Halo系が約4000頭(約35%)、Mr.Prospector系が約2000頭(約18%)、Roberto系が約800頭(約7%)と、ここまでで全体の約60%を占めています(手集計に頼っている部分があるので、表記が曖昧なのはご容赦ください)。2004年種付け分(2005年産・現2歳)については、この3系統の占有率はそれぞれ25%・17%・8%程度なので(追記・注:これは種付け頭数ではなく競走馬登録頭数の中での割合)、いかに急激にHalo(つうかサンデー系)に偏向して行ったかが分かります。
 ちなみに日本のDanzig系は約400頭で、むしろ減少傾向にあります(そういう意味では、ロックの導入自体は的外れでもないかも)。で、ご承知のように、デインヒルもサンデーも1986年産で、死んだのも前者が2003年、後者が2002年と、かなりの近似性を持っています。なのにここまでの差が出るとは・・・・・・。しかも、英愛のDaizig系内におけるデインヒル系の占有率が60%程度なのに対し、日本のHalo系は9割方がサンデー系(残りはほぼタイキシャトルロージズインメイ)。まぁ、欧州はカウンターとしてのSadler's Wellsがまだ君臨してますから、状況が違うと言えばそれまでですが。



現在のところ、クールモアのアイルランドのスタリオンオペレーションでは、半数にあたる24頭−今日本にいるロックオブジブラルタルIREを含めて−がダンチヒ系に属する

▼単純に社台スタリオンステーションの2006年繋養種牡馬と比べてみると、社台の方は27頭中10頭がサンデー系。他場繋養種牡馬まで含めると、39頭中15頭。


はっきり言って、グレイソヴリン系は絶滅の危機に瀕しているとみなされても仕方ないだろう。

▼日本では300頭近く種付けされています。トニービンラインのジャングルポケット(とミラクルアドマイヤ)、Cozzeneラインのスターオブコジーンアドマイヤコジーンと少ないながら駒は揃っている感じ。


また、ブラッシンググルームに頼り切っていたレッドゴッド系も同じような岐路に立っている。

▼日本ではほぼサクラローレルの孤軍奮闘状態、いや、種付け数的にはバゴが貢献していることはいるんですが・・・・・・その、ねえ。

ネヴァーベンド系のミルリーフの支流は、昨年のエプソムダービーサーパーシー(父マークオブエスティーム)が出たことにより危機感はさほどなさそうだが、それでもダイラミの不振により、ここもいくつかの障害に悩まされている。たぶん、救世主になるとしたら凱旋門賞ダラカニあたりか。

▼日本ではパラダイスクリークの以下略。ミルジョージでもブルボンでも足りなかったというのは切ない。

シャーペンアップ系(中略)について今、非常に重要なのは、この系統の種牡馬を父に持つ繁殖牝馬と、デインヒルUSA系やサドラーズウェルズ種牡馬との配合から活躍馬がたくさん出ていると言う事実である。(中略)しかし現状は、残念ながら生産者たちはこのラインを必ずしも大事にはしていない。(中略)昨年のシャーペンアップ系の種付け頭数は合計しても200頭ちょっと。10頭のG1勝ち馬を含めて30頭もの重賞勝ち馬を出しているセルカークでさえ、06年の種付け頭数は前年の89頭を大きく下回る66頭に落ち込んでいるのだ。セルカークを配合することで価値ある血脈を保持することになるというのに、これを利用しようとする生産者の数が少なくなっているというのは、憂慮すべき時代と言えよう。

スギノハヤカゼが生きてれば・・・・・・どうにもならなかったでしょうね(苦笑)。サンデー系については、特にこの相手が相性がいい、というような話をする必要もないぐらい繁殖を選んでいないので、とにかくサンデー系への偏向さえ避ける努力があればいいと思うんですが・・・・・・。


とにかく生産者たちは短絡的な見方をしがちである。将来的には様々なサイアーラインをミックスさせた方が、必然的にビジネスの発展につながるのではないか?

▼返歌として、以前書いたパロディ台詞を再掲。
「マイナー血統は嫌? そんなにサンデーの血が欲しい? 今のような寡占状況に至れば、ウォーニングやサッカーボーイの血の方がむしろ貴重だと思わない? 大勢に日和って、落穂拾いで糊口を凌ごうとするような姿勢に、わたしはもう飽き飽きしてるのね」