馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

「岩手、イラネ。」は果たして痛手か?

http://yosouka.net/cgi/mt/archives/000568.html

「遭難したらごめんね」と言われながら渡された登山計画書に従って冬山に登る事はできませんよ。

根本的な廃止の原因は、400億円以上という常識外のお金をつぎ込んだオーロパークの新築費用という事になるのでしょうけど

もう生産者も自らが生き残るために昨年の段階で地方用の馬なんてほとんど作ってないそうです。無茶苦茶小規模なのに、スペシャルウィークつけていたりして、もう中央にしか売れないという前提で配合しているとか。

http://yosouka.net/cgi/mt/archives/000569.html

とりあえず現在の岩手競馬組合には解散してもらうしかないでしょう。300億円以上の債務が現実にあるわけですから、とっととご退場いただくしかありません。

岩手は一日に2億円も馬券を売り上げているわけですから、真っ当にやれば単年度で黒字化ってのはそんなに難しい事ではないはずなんですよね。つーか、これでどうして赤字になるの?って感じですから。

岩手県競馬組合解散として、その後。 - 血統の森+はてな経由。この問題に関してはもう99%今北産業状態なので、エントリ起こすのもどうかという状態なんですが、なかなか刺激的・示唆的な言葉が並ぶ記事がmomdoたんとこで紹介されてたので、ウチでも・・・・・・という感じで。


▼えー、そういえばこないだ『バブルでGO!』って映画を観てきたんですけど、それは別に関係ないんですけど、なんつうか、この件に関しては、そりゃバブルも弾けるわな、というぐらいしか感想がありません。今後の不良債権処理が終わるまでの困難な道程を思うと暗澹とはしますし、バブル崩壊後多くの人間が受けたのと同じ種の痛みを競馬関係者の多くも受けることになるでしょうけど、傍観者的立場から、あるいはマクロな視点から見れば、「それは仕方のないことだ」で済ませることもできるレベルの話だと思います(直接的な利害関係者の方が読まれていたら謝るしかありませんが)。年間売り上げ600億ぐらいの頃に400億のハコ作ったら、そこから右肩上がりで伸びてかない限りそりゃ潰れますよって話で。



▼“岩手は一日に2億円も馬券を売り上げている”っつっても、先週の土曜の1回中京第3日目の勝馬投票券売得金は、55億8104万200円ですよ(参照※PDF注意)。これだけ中央と地方でスケールメリットに差がついてしまった以上、こんなご時勢では、最早「黙っていてもお金が入ってくる」レベルじゃないと地方競馬を続ける経済的意義は見出せないところまで来てしまっている気がします。雇用やら観光収入やら税収やらを含めて考えるべきという言説もありますが、変な話、経済効果だけ考えれば、「WINS誘致した方がデカいんじゃね?」というのが笑い話ではない現実問題でしょう。頑張れひこにゃん!(違)それはともかく、「今のところ借金まみれですが、なんとか頑張って遣り繰りすれば単年度黒字も不可能ではありませんよ」というレベルの事業案、普通の組織なら稟議レベルで済まされておかしくない(もちろん結論は却下)ところを、議会で採決が割れるところまで持ち上げてくれてるだけですごいよね、というのが、全くの部外者である自分の素直な感想です。
 で、仮に経済抜きにして文化保護問題として考えた場合(この前提自体ナンセンスではありますが)でも、サラブレッド生産地としての東北というのは、規模としては最早コンマ以下の世界。考慮すべきは青森ぐらいでしょう。では、チャグチャグ馬コに代表される(のかどうか知りませんが)奥州の馬文化を守る上で、果たして「競馬」つうか「サラブレッド」は必要なのか、という議論になった時、ばんえいのような特異性があるわけでもない岩手競馬は、自らの存在意義を証明しうるんでしょうか。同じく一杯一杯な道営と比べても、ここは決定的に違う部分だと思います。


▼この岩手の話を日本競馬全体の問題に敷衍するにしたって、まず前提として、中央競馬だけで年間4000頭以上の馬を受け入れられているわけです(結果、馬房や出走枠は総じて馬で溢れかえってる訳ですが)。以前「日本のサラブレッド生産頭数は、5000頭前後ぐらいにまで落ち込んでもまだ適正範囲じゃねぇの?」という話をチラッと書きましたが、それも踏まえ、“地方用の馬なんてほとんど作ってない”という状況が不健全なのかと問われると、個人的には別に大きな問題があるとも思えないんですよねこれが。底辺の縮小が競馬にとって良いわけはないという論法の方が自然かとは思いますが、「ぶっちゃけ地方競馬って要らなくね?」ともし真っ向から聞かれたら、少なくとも僕としては「いや、それは違う」と返せる明確な材料をこれっぽっちも持っていません。

気をつけないと負の連鎖が止まらないですぜ、それらはやがて中央にも影響が来ますぜ

岩手県競馬組合解散として、その後。 - 血統の森+はてな

というmomdoたんの危惧は、韻文的な聞こえはいいですが、なにか散文的つうか論文的に根拠あって言ってることなのかえ? と聞いてみたくもあり。



種牡馬ビジネスサイドから見てみると、前にこのエントリを書いたときにも思ったんですが、年間20頭前後の輸入種牡馬がいた1990年(サンデーサイレンスの輸入年でもある)を中間点とするdecadeがまさに競馬バブルの絶頂期であり、そしてその状況は本来的な意味でのバブル経済と同じく「異常」な局面であったように僕には思えます。サンデー・BT・トニービンという御三家が日本の馬産を劇的に変えたことは事実であり、それは積極的な導入の功績と言えるのかもしれませんが、手法としてはなんともバブリー。現在アクティブな国内種牡馬の数というのは多分150頭ぐらいじゃないかと思いますが、仮に年間15頭がスタリオン入りして平均10年で入れ替わる、というサイクルと仮定して、輸入種牡馬の数がここ最近の年間5頭前後の水準を維持すれば、内国産種牡馬の枠は年間10頭程度。世代の(まともに競走生活を送った)牡馬全体の200頭に1頭ぐらいの割合になるかと思いますが、これは個人的には「そんなもんじゃないの?」という範囲内です。10年サイクル、という前提もかなり甘く見てますしね。で、その10頭枠が例えばサンデー系に偏っちゃったりするのはもう生産者サイドの勝手というものであって、いずれ血が飽和した時に困るのはファンではありませんし。もちろんファンとしても血の多様性が保たれた方がベターではありますが、傍観者的立場から、あるいはマクロな視点から見れば、「それはid:toroneiさんあたりが悲しむだけのことだ」、で済ませることもできるレベルの話だと思います(いや、僕だって残念ではありますが)。これで馬産規模が仮に5000頭ぐらい(競馬主催者規模で言うと中央+南関東ぐらい?)にまで落ち込んだとしても、150頭で頭割りすれば30頭ちょい。実際には上位種牡馬に花嫁が集中するとしても、平均値を採る限りさほど絶望的な数字でもないような気がします。



▼一方幼駒ビジネスサイドから見てみると、年間数頭レベルの小規模馬産家が、種付料数百万円レベルの種牡馬で一発狙ってハズレ引いてコケるのはもう自業自得以外の何物でもなく、身の丈に合った商売をしろとしか声のかけようがありません。で、身の丈に合った商売相手=地方競馬が成立しなくなってきている流れが変えがたいのであれば、市場のニーズに合わせて動く(一発狙うか合従連衡で乗り切るか手法は様々でしょうけど)か、静かにフェードアウトするかの二者択一しかないわけですが(個人的には、現在の中央競馬の規模を考えると、誠実かつ的確に仕事をしていれば十分ニッチな生産者の生き残る余地はあると思いますが)、そうした基盤の危うさはどの業界の中小企業であっても同じことで、馬産が特別なものであり守られるべきものであると考えるほうがおかしいでしょう。というか、必需産業でない分、リスキーさも高いという認識は絶対不可欠ではないかと思います。もちろん、「馬産を守るためにも地方競馬を守れ」という言説が本末転倒の天然色見本とでも言うべき愚論なのは論を俟たないでしょうし。まぁそれを自ら実践してる人たちもいるわけですが・・・・・・。

JBBA日本軽種馬協会と生産地7団体は2月14日、岩手県議会の開催(2月16日)に先立ち、増田岩手県知事、伊藤同議会議長、谷藤盛岡市長、山本同議会議長、相原奥州市長、小沢同議会議長を訪問し、要望書を提出し、全国の軽種馬生産者が各議会での競馬存続のため融資関連議案の可決を強く要望した。』

岩手競馬への融資問題について県議会は否決、増田県知事が廃止を示唆 - 【サラブレッドセール(せり市場)=馬市】&【種牡馬】の最新情報 by馬市.com

▼で、馬券ビジネスサイドから見てみると、岩手競馬の2004年の年間売り上げが317億円(参照:2007-02-15 - 黒船雷電)。一方、先週3/11の中山・阪神・中京の売上合計は、大体295億円ぐらいです。土日ではなく日曜だけです。年間300億のパイの消失が、週間500億のビジネスにとっての蟻の一穴になりうるかという質問に、僕は答える必要を認めません。



▼もし地方競馬のこれ以上の衰退が問題になるとすれば、馬資源の流動性という点に尽きるんじゃないかと思いますが・・・・・・これも、個人的には別にクリティカルな部分ではない、と把握しています。ただ、ここについては理屈では割り切れない要素も多々関わってくるかと思いますので、一概には言えないのも確かかと。そのうち考えがまとまったらまた書きます。


▼で結論としては・・・・・・あ、最初に書きましたね。もう一度書いておくと、「それは仕方のないことだ」で済ませることもできるレベルの話だと思います、ということで。



<関連>
2007-03-16 - 関内関外日記(跡地)

自業自得とはいわぬ。業は政治家や役人などがやった。罰を得るのは競馬の現場の人たちだ。

▼“競馬から二歩、三歩と下がって視点を変えれば”、「企業ってのはそんなもんでしょう」としか言いようのないところ、なんでしょうね。地方競馬にとって経営者はあくまで政治家と役人であり、労働者はすなわち現場の人で、いつもそちらが切り捨てられる側というのは普遍にして不変の構図です。負債数十億円レベルの倒産なんてこの国においては珍しいものでもないわけで、そこに感傷以外の何かを投げかけることなんてできましょうか。少なくとも僕にはできないです。そして、「競馬の現場の人」への同情論にも、僕は与することはできません。いや、したくない、といった方が正確でしょうか。なぜなら、そこに意味があるとは思えないから。競馬がアジールである理由はどこにもないと思うから。



<関連>
平成19事業年度収支予算書 - 日本中央競馬会(※PDF注意)

競馬会は、ウインズ新横浜(仮称)新築に伴うJRA発注工事のため、3,307,600千円を限度として、平成19年度以降2ヵ年にわたり支払うための契約を結ぶことができる。

勝馬投票券収入 18年度予算額 2,808,863,910千円
勝馬投票券収入 19年度予算額 2,825,847,610千円

国庫納付金 18年度予算額 279,805,800千円
国庫納付金 19年度予算額 281,427,800千円

第二国庫納付金 18年度予算額 10,000,000千円
第二国庫納付金 19年度予算額 10,500,000千円

借入金 19年度予算額 0千円
利息収入 19年度予算額 2,052,146千円

競馬賞金 18年度予算額 89,240,000千円
競馬賞金 19年度予算額 89,588,000千円

▼今更改めてなにをという話ですが、なんだこの超巨大優良企業。この組織が優良ではなくなるような局面が訪れたその時こそが、日本競馬の終焉の時である・・・・・・というぐらいの覚悟というか諦観は、別にそう虚無的な心構えではないような気がします。