馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

地方競馬はやりようによっては面白いかもしれないけれど

http://www.doblog.com/weblog/myblog/3812/2608628#2608628

会報誌「エクリプス」の9月号の特集記事「今、地方競馬が面白い!〜地方競馬で見る新しい夢」を書かせていただきました。

▼競馬ライター・森孝時氏がキャロットクラブの会報『ECLiPSE』の9月号に寄稿されていた『今、地方競馬が面白い!』という特集記事が、一口馬主的に興味深かったので軽く触れさせていただきます。
 記事の内容的には、ざっくり言ってしまうと

  • 地方競馬の現況
  • 地方で馬を持つことのメリット

の2点。そこから敷衍して、一口馬主であるキャロット会員に対し地方競馬(と、地方馬の所有・出資)への興味を喚起する主旨となっています(誤読していたらすいません)。
 といっても、現状地方競馬クラブ法人を認めておらず、記事中でも具体的には、NAR理事の西岡宗俊氏が一昨年に雑誌『Furlong(ハロン)』で発言した

協会としても導入できればという方向で考えている

主催者に対するアンケート調査でも、前向きな回答は得ている

という方向性を示すにとどまっています。


 ただ、現状でも社台(や大樹)が地方競馬馬主の有資格者向けに募集を行っており、記事内容と併せて、その実情をケーススタディしておくのもいいかな、とは思いました。というわけで、社台の地方競馬オーナーズ募集馬の成績を出してみました。表は以下の通り。

  • 2007/09/17集計
  • ソースは社台RHの公式サイトと地方競馬データ情報(http://www2.keiba.go.jp/keibaWeb/PageFlows/DataRoomTop/begin.do
  • <追記>社台の公式サイトに募集カタログがアップされている2001年産以降の3世代についてのみ集計
  • 調査時点で馬主が吉田氏名義でない馬のみ、厩舎名横に※を記して経歴を明示
    • それ以外の馬の所属と厩舎は、最新の情報をそのまま記載
  • 中央での獲得賞金がある馬は、馬名横に☆を記して明示
  • 単純収支の色分けは
    • 青字・・・(獲得賞金−募集総額)>0円
    • 緑字・・・−1円>(獲得賞金−募集総額)>-499万円
    • 赤字・・・-500万円>(獲得賞金−募集総額)


生産年 競走馬名 募集総額 所属 厩舎 獲得賞金 R数 単純収支
(万円) (円) (地方) (地方)
2001 ナナイロノキセキ 800 大井 蛯名末五郎 2,200,000 3 -580
2001 ライプヴァージ 800 大井 赤嶺本浩※1 1,140,000 15 -686
2001 ホワットアミラク 1200 船橋 川島正行 0 1 -1200
2001 キスミートゥナイト 800 船橋 出川龍一 10,831,000 44 283
2001 ネローリ 800 川崎 山崎尋美 9,071,000 29 107
2001 プチヴェルド 900 川崎 田島寿一 1,100,000 8 -790
2001 スウィープダンス 900 川崎 山崎尋美 7,310,000 13 -169
2001 ブライトワールド 800 大井 中村護※2 4,912,000 33 -309
2001 アタックヴェーラ 800 船橋 川島正行 7,965,000 12 -4
2001 ソリッドループ 700 兵庫 曾和直榮 1,281,000 9 -572
2002 コンクルージョン 1200 大井 蛯名末五郎 6,986,000 10 -501
2002 ワールドエミネンス 1000 大井 赤間清松 15,584,000 36 558
2002 マイドキュメント 1000 船橋 出川克己 0 0 -1000
2002 スパングルムーヴ 1200 大井 蛯名末五郎 0 0 -1200
2002 ライトインヴァース 1000 大井 山藤統宏 2,736,000 5 -726
2002 マズルブラスト 1000 船橋 川島正行 115,010,000 25 10501
2002 リードマイリップス 900 大井 村上頼章 7,390,000 19 -161
2002 スプリームシュガー 900 船橋 出川龍一 9,476,000 12 48
2002 ジャガランディ 1000 大井 赤間清松 2,020,000 2 -798
2002 エトワールドシネマ 800 船橋 宮下靖旨 1,152,000 6 -685
2002 ブラックジー 1200 大井 栗田裕光 10,416,000 29 -158
2002 ナイフエッジ 800 川崎 内田勝 0 0 -800
2002 アメリカンサクセス 1200 船橋 川島正行 500,000 2 -1150
2002 フェスタロバリー 1200 船橋 出川龍一 4,460,000 15 -754
2002 マグナムシュート 900 川崎 山崎尋美 0 1 -900
2002 バトルワレンダー 1200 川崎 山崎尋美 10,310,000 29 -169
2002 ドラゴンシャンハイ☆1 1000 船橋 出川龍一 28,366,000 12 1837
2002 ドーサイルサンダー 800 兵庫 山口益巳 3,877,000 22 -412
2003 エンジェリックラヴ 1000 川崎 内田勝 2,000,000 4 -800
2003 ドゥアズマムディド 700 大井 栗田裕光 2,708,000 19 -429
2003 ステップクローザー 1600 船橋 川島正行 17,620,000 7 162
2003 インスパイアローズ 800 船橋 川島正行 6,412,000 10 -159
2003 ジュエルトリガー 1000 船橋 出川龍一 2,758,000 4 -724
2003 アストリッド 1000 船橋 川島正行 21,770,000 15 1177
2003 チャーミングマズル 900 大井 堀千亜樹 5,678,000 19 -332
2003 オプティカルグラス 900 大井 村上頼章 2,604,000 19 -640
2003 アイペイバック 800 船橋 宮下靖旨 1,336,000 3 -666
2003 ビクトリースタンド 1400 大井 高橋三郎※3 2,988,000 21 -1101
2003 デザートレジーナ 800 船橋 出川克己 6,276,000 11 -172
2003 ボーンセレブリティ 1000 川崎 山崎尋美 3,454,000 11 -655
2003 サンダーオブハード 1000 船橋 出川龍一 15,104,000 22 510
2003 プレザントグラマー 700 大井 村上頼章 3,817,000 20 -318
2003 オシャレホース 1000 大井 中村護 2,250,000 14 -775
2003 プレイズアストーム 1000 大井 蛯名末五郎 8,106,000 13 -189
2003 ディバインウインド 1800 川崎 山崎尋美 3,790,000 21 -1421
合計 募集総額 44200万円 獲得賞金 37276万円 625 -6924万円
平均 募集総額 982万円 獲得賞金 828万円 14 -154万円


※1・・・赤嶺→出川龍に転厩後、16戦目以降は転出
※2・・・34戦目以降は転出
※3・・・高橋三→村上頼→坂本昇と転厩後、22戦目以降は転出
☆1・・・中央で1戦1勝、中央獲得本賞金700万円


▼とりあえず、数字を見て思ったこと。

  • 大当たりという馬は当然ながら非常に少ない(マズルブラストのみか)
  • その分というか、丸外れという馬も少ない(標準偏差が中央より小さいっぽい)
  • 1頭当たりの出走数が思ったより少ない(ほとんど南関東だから?)
  • 中央に参戦する馬も思ったより少ない


▼ちなみに社台RHの方のデータを見ると、募集総額の平均が概ね2500万円程度までにとどまる一方、獲得賞金面では世代トータルでの単純収支がマイナス(単純回収率100%未満)ということはほぼありえないというレベルの数字で推移しています。なので、投資として見るなら社台で一口やるほうが割がいいのは確かかと。
 ただ個人的には、少なくとも社台の地方オーナーズ馬の数字を見る限り、アリかナシかで言えば十分アリかもなぁとは思いました。少なくとも、社台とラフィアン以外で普通に一口やるより、(参加するための最低ベット額は違えど)回収率的なリスクは低い気がします。
 そしてなにより、「本当の馬主資格が取れる」という点のアドバンテージは大きいかも・・・・・・と思うんですけど、地方の馬主資格があると具体的にどんなことができるのかはぶっちゃけよく分かってません(えー)。


▼もちろん地方競馬を対象としたクラブ法人の設立にも色々とネックはありそうで、

  • 賞金水準的に南関東以外では厳しそう
  • 参入する業者(クラブ)側のうま味に乏しい(特に非牧場系)
  • というか社台グループぐらいの地力があってこそ成立するのではという気も
  • そもそも最大20名までの共有が現時点でも認められているのに、クラブ法人(ファンド形式)というスキームを採る必要が果たしてあるのか

と、地方競馬についてはド素人の僕は感じたりもしてるんですが。


▼というわけで、とりあえず今回の結論としては、「関東在住の競馬ファン一口馬主に興味がある人は、社台で一口やるのと同じ程度の資金で地方競馬オーナーズという選択肢もあるよ」(to某サイト管理人さま)というぐらいで、それ以上のことは(地方競馬全体の見通しの暗さもあいまって)ちょっと曰く言い難いかなぁと。
 やり方によっては、地方での共有馬主制度というのは「おらが町の競馬」を盛り上げるための起爆剤になりうるかもなぁとか思ったりもするんですが。その辺、一口馬主側からではなく、地方競馬主催者や地方競馬ファン側からのご意見も是非うがかいたいところではあり。


<関連>
http://www.keiba.go.jp/nar/document.html