馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

違いがよくわからない

http://yosouka.net/cgi/mt/archives/000678.html

えーとですね、ちょっとこれを見て欲しいのですけど

セレクトセールの速報
セレクションセールの速報

この二つの表を見比べると、両者に決定的な相違がある事を理解できると思います。

まぁ平均落札額とかデータそのものにも大きな違いがあるのですけれども、セレクションセールの方には、主取りになった際のリザーブ額が書かれてないんですね。

▼どうやっても、

「一方セレクトセールの速報にはリザーブ額(最低落札額)が書いてある(という決定的な相違がある)」

と続くようにしか読めないんですけど、そもそもセレクトの速報に書いてある「主取り(○万)」の○は、最低落札額ではなく、「単に最後に掛かった声の額」ではないかと思うんですがどうなんでしょうか。僕は単なる競馬ファンで、ただグリーンチャンネルの中継を見ていただけなのですけど、

(せり人の禁止行為) 第25条 せり人は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
(6) リザーブ価格書に記載されたリザーブ価格を他にもらすこと。

http://www.jrha.or.jp/jpn/03/kitei.html

と業務規程にちゃんと書いてありますし……。


 あと、当該エントリのコメント欄で、

一応スタート価格はリザーブ価格の20%減までの範囲と書かれているので、調べようと思えばわかりはするのですが、でもちょっと不明瞭ですよね。

という指摘があり、現地にいる人(プレイヤー)にとっては別に“決定的な違い”でもなんでもないような気がします。まぁ、あとで「いくらまで声が掛かったか」が確認できるかどうかというのは、当日不参加だった人のことを考えると結構違うという考え方もあるでしょうけど。
 ただまぁ、タイトルで「セレクトとセレクションの違い」と謳っておきながら、枕の話以降は「日本とオーストラリアの違い」が眼目になっているので、所謂「釣りタイトル」なのかもしれません。一応「セレクトの話にしろセレクションの話にしろ、業務規程ぐらい読んでから書かれた方が良いのでは」という感じで釣られておきますが。

というか、リザーブが800万なら600万から10万づつ延々と競らずに、最初から780万!と声をかけりゃいいんですよ。こんな見ていてイライラさせるやり方もそうはないと思うので、むしろもう普通にリザーブから競ってもいいと思うんですけどね。

http://yosouka.net/cgi/mt/archives/000678.html

▼買い手と売り手の間にあまりにも温度差がある馬については、確かに見ていてイライラしますし、それでセリ全体の進行が押しちゃうのは売り手側の利益も損なう事態なので、HBAの人もちょっと考えればいいのにとは思います。
 ただまぁ、競走馬に限らずセリ(オークション)においてスタート価格(入札開始価格)とリザーブ価格が離れているのは、別に普通のことではないかという気もしますが。あとはその乖離があるかないか、市場にとってトータルではどちらが良いのかという話になるんでしょうけど、そのへんはちょっと僕には判断がつきません。
 ちなみにセレクションセールのHBA 日高軽種馬農業協同組合 販売者向け情報に置いてある資料を見てて面白かったのが、せり上げ方法のガイドライン

○基本的に第一声(スタート価格)をお願いいたします。
○購買者のせり上げに対してせり掛ける時は、間を置かずにせり上げて下さい。(間を空けると、購買者は冷静に価格を検討してしまいます)
(中略)
○購買者から声がなかった場合、販売申込者の声でスタート価格からせりを開始し、それ以上にせり上げしなかった場合には売却(主取り)といたしますので、主取り後の売買に不利が生じない価格までせり上げて下さい。

http://www.hba.or.jp/consig/pdf/2008/ss2008_y_info.pdf

強調は引用者によります。なんというかまぁ……僕は直接関係ない(間接的にはあるかも)ので笑っていられますけど。

イングリスでは、リザーブの確か6%ぐらいが手数料で、リザーブを高くすると上場手数料も上がるという仕組みだったと思います。なので、売る気のない馬を上場すると、手数料だけがかかるので、売りたい馬だけが上場される仕組みになっています。

「馬の血統もそこそこだし悪い馬でもないので、安くは売りたくないけど、とりあえず上場して、いくらまで声がかかるか見てみよう」

馬を売るプロである牧場が、こんな考えなのであれば、それはただの素人と変わらないのではないでしょうか。プロなら自分が生産した馬の価値(値段)を見極めてその値段で売ろうとするのが普通だと思うのですね。

http://yosouka.net/cgi/mt/archives/000678.html

▼ここに関しては確かにうなずける面もあります(「売り手の思惑以上の値が付く」という可能性を捨てるのもどうかと思いますけど)。まぁ運営会社がやってるセールと農協主導のセールでは根本的なところから違うのかもしれませんけど、せめて「セレクション」セールぐらいはもうちょっとなんとかならんのかなぁとは思います。見た目の落札率の低さとかって、どっちかというと買い手が不景気だとかいうより、売り手の選別が甘いだけのような気もしますし。
 あとセレクトセールに関しては、

れでぃけっと 2008/07/18 11:40
あっ、グランド牧場は「馬を売る気がない」んじゃなくて、退職した人から聞いた話では「この値段で買わなきゃ売らない」という感じらしいです。
社長強気な人らしいからなぁ・・・。


Southend 2008/07/19 00:58
 グランド牧場、やっぱりそんな感じなんですねー。去年と今年見ていて、どうもリザーブ価格の基準がどうも大方が考える相場観とはかけ離れているような気がしていました。そのことを「売る気がないのでは」と表現してみたわけです。まぁ性格もあるんでしょうけど、基本はオーナーブリーダーだということなんでしょうかね。
(引用者により一部削除して再掲)

セレクトセール2008・1日目実況3(No.121〜) - 馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)

こういうケースも多そう。加えて、

初年度の非社台系馬の落札率がHBAのセレクションセールの落札率をはるかに下回ったため、翌年以降はHBAのセリに出そうと考えた生産者がかなりいたらしく、JRHAは翌年(つまり昨年)日高からの上場馬を集めるのに相当苦労したと聞いている。これは○市を付けるための要件として社台グループ以外の馬を50%以上上場しなければならない(それによってプライヴェートではない公設市場として認められる→市場取引馬奨励賞の交付対象になる)ということが背景にあったのだが(後略)

Racing Blog:'08セレクトセール雑感 - livedoor Blog(ブログ)

こういう背景もあったりして、なんだかもう、という感じ(まぁ市場取引馬奨励賞はもう廃止されちゃいましたが)。ちなみにセレクト1日目(1歳馬)の自分の実況から、グランド牧場販売分を抜粋。

  • 46 アイアンドユーの2007 めす キングカメハメハ (有)グランド牧場
    • 鹿毛から黒鹿毛へ変更あり。オークショニア中尾氏に。お台は800万円から。ヒンヒン鳴いてぐるぐる回る。1250万円でNo.427が落札。→主取り。
  • 95 アコガレの2007 牡 フジキセキ (有)グランド牧場
    • 入ってきてすぐ出口に向かって突進。そんなに帰りたいか。お台は1200万円から。1450万円でNo.427が落札。→主取り。例年通りグランド牧場はあんまり売る気なし。

こうして見ると、上記のセレクションの「スタート価格はリザーブ価格の20%減までの範囲まで」というのは、セレクトにはないんですね。ただし代わりに、

(1) 販売申込登録料
社団法人日本競走馬協会の会員である販売申込者にあっては家畜1頭につき52,500円(消費税含む)。
会員以外の販売申込者にあっては家畜1頭につき105,000円(消費税含む)。
この登録料はいかなる理由があっても返還しない。
(2) 売買手数料
販売者の負担とする(取引価格より差引徴収)。
当歳馬:取引価格の100分の3
1 歳馬:取引価格の100分の5
(3) 主取手数料
主取馬(最高のせり価格がリザーブ価格に達せず売買が成立しなかった上場馬)の上場者の負担とする。
当歳馬:リザーブ価格の100分の1.5
1 歳馬:リザーブ価格の100分の2.5

http://www.jrha.or.jp/jpn/03/kitei.html

こういう手数料が掛かる模様。イングリスの6%ほどではないにしても、一定のリスクはあるんですね。ちなみにセレクションの方は、主取り手数料はリザーブ価格を超えない限りなし(超えての主取りは5%取られる模様)。



▼僕はセレクションは見ていませんが、セレクトの実況中継を見ていて一番分かりにくかったのが「再上場」。把握している分だけですが、

  • 81 ケイアイバラードの2007 牡 キングカメハメハ 川越ファーム
    • お台は1000万円から。盛大にいななく。しかし上がらんなー。1150万円でNo.207が落札。→主取り。→再上場950万から。一声でNo.385。→コスモヴューファーム。
  • 84 ドーンランサムの2007 めす フジキセキ (有)パカパカファーム
    • お台は700万円から。980万円でNo.189が落札。→主取り。→105番の後に再上場。900万から。粘りに粘って一声、No.385。→コスモヴューファーム。
  • 110 プレイアローンの2007 牡 バゴ (有)長谷川牧場
    • お台は700万円から。1000万円でNo.263が落札。この場ではやっぱりなんらかの決め手がないと伸びない。それにバゴだしなあ。→主取り。→144番のあとに800万で再上場。→東京都馬主会。
  • 119 トウヨウロイヤルの2007 牡 キングカメハメハ 郄村 伸一
    • 1000万円で主取り。→144番のあとに800万で再上場。No.425の一声。→川島るみ氏。

てな感じ。事前のリザーブ額に届かなかったものの、やっぱり売りたいから再上場、ってことでしょうか。マル市手当もなくなるので水面下の庭先にしない意味がわからないんですが、主取手数料の問題とか?
 ちなみにマル市手当廃止の影響については、

この記事あたりをどうぞ。……つーかあれですね、

 市場取引馬のメリットがなくなってしまうと、いったいどうなるか? 奨励賞がないのだから、購買者は市場取引にこだわる必要がなくなる。また、公設市場とともに、今度は私設の市場さえ登場してくる可能性だってあるだろう。例えば社台グループなどは、もう無理をして上場馬の半分を他の生産者に依存しなくとも、立派に「セレクトセール」を開催することさえ可能なのだ。日高にあっても、有志がセリ会社を設立し、市場開催に踏み切るかも知れない。

こういう話って、つい最近も誰かが同じようなことを書いてらっしゃったような。まぁいいんですけど。


▼えー、なんだかとりとめない話になってしまいましたが、とりあえず以上。