馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

菊花賞感想。

▼圧倒的でした。自己最高のスタートを「決めてしまった」ことと、レースと言うものを理解しすぎているがために、1周目、特に4角でかつてないほど行きたがってしまったこと、さらにインティライミ佐藤哲三がいなかった分を十分に肩代わりする、アドマイヤジャパン横山典弘のグッド(いや、ほぼベスト)ライド。それら全てがまるで取るに足らない瑣事であるかのように、上がり33.3秒の”飛脚”でなにもかもを撫で斬りにしてしまったんですから、ケチのつけようがありません。細かいレース回顧については、JRA攻略百年構想:菊花賞回顧 - livedoor Blog(ブログ)が簡潔かつ的確でこちらをご参照いただければ十分かと思いますが、とにかくあのレースを見て「期待したほどのインパクトを感じなかった」「古馬との対戦に不安を残す結果」などと言ってるような人は、可及的速やかにメガネスーパーへゴー。佐藤哲三が「もしインティライミで出走できていれば・・・・・・」と思っているかどうかは分かりませんが、少なくともノリは悔しいどころか、納得を通り越してむしろ爽やかぐらいの気持ちでいるんじゃないでしょうか。「あんな馬に乗ってみたいよ」というコメントを出していたという話もありますし、諸手を挙げて笑顔で降参という感じじゃないかと想像します。


▼TARGETで検索する限り、芝の2000m以上で上がり3F32秒台の脚を使ったのは過去延べ7頭。その全てが、新潟の芝2000m戦を舞台にしてのことです。さらに菊花賞に限れば、'96年の菊花賞(勝ちタイムは3.05.1)でダンスインザダークがマークした33.9秒が過去最高。三冠馬の比較で言えば、ナリタブライアンの場合、菊花賞の上がり3Fは34.3秒、京都で行われた'95年の阪神大賞典(勝ちタイムは3.08.2)では33.9秒。京都の3000mでの最高上がり3Fタイムは、今回のディープと、おととしダイタクバートラムが万葉Sで記録した33.3秒であり、さらに言えばその万葉Sの勝ちタイムは3.09.1という遅いものでした。
 レース間の比較においてどれだけ”スロー”ペースだろうが、一定以上のラップで一定以上の距離有酸素運動を続ける限り疲労の蓄積は確実に起きるわけで、その点今回のディープの末脚は、「13-13ペースで2400m走った後の600mで、サラブレッドが出せるタイムの構造的限界」のほぼ近似値ではないかという印象があります。それを、1周目あれだけ引っ掛かって、トータルで見れば決してベストパフォーマンスを発揮したと思えない状況下で叩き出してしまったディープインパクトは、これまでのサラブレッドの限界をブレイクスルーしてしまった「突破者」ではないかというのが率直な感想です。


▼ちなみに同世代間での比較では、三冠で2→3→4着と物差し馬となるシックスセンスと並べてみると、
皐月賞

<ダービー>

菊花賞

で、大雑把に言えば、ほぼラストで使える脚がそのまま着差になる結果。紛れを恐れて早めに仕掛けた皐月賞は別としても、中長距離戦で自分の競馬をすれば上がり3ハロンで他馬に時計ひとつ(以上)の差を確実につけられるという性能の違いは、レギュレーション違反そのもの。

http://www.nikkansports.com/ns/horseracing/p-hr-tp0-051024-0006.html

 と、松田博師のおっしゃるとおり、この馬と同世代に産まれた牡馬は間が悪かったねと言うほかありません。そしてディープの次走では、いよいよ同じ思いを歴戦の古馬たちも味わうことになります。仮にこの後ジャパンカップに出てくるのなら、55キロの斤量でダービーと同じだけの能力を発揮すれば、今年の想定メンバーならあっさりでしょう。Hasta la vista, Baby.


▼とにもかくにも、関係者の皆さん、特に伊津野貴子さん、おめでとうございます。ディープと同じく伊津野さんが育成に携わった馬を一口持っているんですが、その馬の活躍も期待してやってください(デビュー戦は負けちゃいましたが)。


▼あ、あと自分の外れ予想についてはスルーの方向で。やっぱり予想を公開するという行為は空しいもんですな(今更)。でもちょっとだけエクスキューズ。ミツワスカイハイは、騎手コメントからやはり長距離適性はあったようですし、プラス20キロがなければ入着はあったかも。でもまぁ、馬券にはならなかったでしょうけどね。でもってアドマイヤジャパン、よく母系を見ると結構重たい血なんですね。ビワハイジの現役イメージが残っていたのが失敗。まぁ、こんなもんですね。来年の菊でまた頑張ります(懲りない)。