馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

馬医学のエビデンス

http://d.hatena.ne.jp/drk2718/20081003/p1
笹針やソエ焼きといった伝統的な、そして行為の意図を知らずに見ると動物愛護の観点上問題がありそうな治療法に関する疑義というのは、競馬情報をネットで漁っているとわりに頻繁に目にします。人間界ではEBM(根拠に基づく医療)という考え方が浸透してきており、もちろん馬医学の分野でもその傾向はあるんでしょうけど、観測範囲内では相変わらずソエ焼いたりハリ打ったりという話はよく耳にしますので、伝統的な治療法の存在感はまだまだ強そうです。

客観的な裏づけのない、しかも痛みや火傷を伴うような治療法を敢えて選択することは正当化されるのだろうか。

http://d.hatena.ne.jp/drk2718/20081003/p1

この辺確かに気にはなるんですが、単純な話として、許容範囲を超えた痛みや後遺症を伴う治療法であれば、施術自体困難だろう、だから大きな問題は無いんだろうと勝手に思ってました。ブリスター(blister≒水ぶくれ)塗布あたりも含め、もちろん施術現場を見たことはありません。見学できるようなところあるんだろうか。ミッドウェイとかでよくやってるらしい記述を目にしますが、さすがに治療現場に立ち会うのは無理だろうなぁ。


屈腱炎あたりのスジ系の治療については、幹細胞を用いた再生医療がボチボチ現場レベルで試されている段階のようで、

なんか見ても、これが定着してくれば、焼き系の治療は廃れていきそうだな、という感はあり。とはいえ一口界隈で施術された馬の動向を見る限り、治癒速度や再発率に関して「劇的」と言えるほどの効果は今のところ感じられないんですが。あとソエの治療については、ボーンスクレイピングも万全の予防法ではないようですし、相変わらずだろうという気もします。
 ただエビデンス云々の話をするなら、焼烙法にしろブリスター法にしろ、意図としては「再生能力を活性化させる」(「末梢神経を焼いて痛みを感じなくさせる」面もあろうという指摘もありますが)ということではっきりしており(してない?)、そういう意味では人間のハリ・ツボよりEvidence-Basedなんじゃないかと思ったりも。ブクマコメの前言撤回みたいでアレですが。まぁ個人的には、鍼灸エビデンスを求めるのが野暮というか、「芸術としての医学」という側面を否定するがごときは避けたいという考え方ですけれども。
 そういやショックウェーブなんかも、聞こえや使う機器なんかを見るとさも科学的先進治療という印象がありますが、原理というか方向性としては、焼き系の治療法と大して変わらんのではないかという気も。要するに「細かく壊して痛みを散らしつつ、治る時に悪いとこも一緒に治してもらう」という。この辺(というかこのエントリ全般)思い込みだけで書いてるので、ツッコミ歓迎。
(参考:競走馬に対するショックウェーブ治療について・pdf注意

笹針についても個人的には懐疑的。「悪い血を抜く」というのだけどそれは本当に悪い血なのか、とか。血行が悪いのはなにかの結果であって原因ではないのでは、とか。

http://d.hatena.ne.jp/drk2718/20081003/p1

▼ちょっと気になったのでググってみたところ、犬と馬。:笹針のお話。 - livedoor Blog(ブログ)という記事がありました。

まずは石けん液で馬体を良く洗います。
そして麻酔を施して、いよいよ針を刺します。

麻酔はするケースとしないケースとあるでしょうし、麻酔するにしても刺したあとの傷の痛みは残るのかもしれませんが(もちろんしないで打ったら相当痛いんでしょうね)。

疲労の溜まっていない所を刺したらどうなるんですか?」
と聞いて試しに刺してもらったら、
黒い血は流れてきません。普通の赤い血が滲み出てくるだけでした。

血行が悪い原因が単なる疲労蓄積であるのなら、対症療法としての「古い血」抜きは有効なのでは、という気も。一口やってればよほど気が長いか余裕がある人を除けば、「自然治癒を待つより少しでも早く競馬に復帰させることが現役馬治療の第一義である」というのは、同意いただける向きも多いのでは。もちろん馬のQOLをできるだけ尊重すべきなのは確かでしょうけど、走ってナンボの経済動物という側面も含めて考えなければならない問題でしょうし。まぁ笹針によってどこまで回復が早まるのかという統計データを採るのは難しそうですけど。


▼ともあれ一口者として、もう少しこの辺勉強しといた方がいいのかなぁと思った次第でした。


<関連・参考>