競走馬の馬体を評価する基準をまとめてみた
▼インスパイア元はこちら。
ググれば出てくるような話ばかりですが、これを期にまとめてみました。色々勘違いしている可能性があるので、事実誤認があればご指摘いただければこれ幸い。特に断りがない限り、馬体写真は自分の出資馬の募集時立ち写真、馬名部分はnetkeibaへのリンクとなっています。馬の部位名は
あたりを参照のこと。ただ、以下の記述はある程度「知っている」人を想定して端折っているところも多いので悪しからず。<横から>
首差し(太い/細い)
- 力強さに欠けるのはどうかも、太すぎるとスムーズな動きを妨げる印象も。首の長さも含め、ほどほどが良さそう。
↓グランドミッション。
明らかに太いですね。戦績を見ても、スピード競馬に対応できなかった印象。
肩(寝ている/立っている)
- これの見極めが個人的課題。言われればわかる気もしますし、立っている馬が良くないというのも感覚的には理解できるんですが、いざ補助線とか引いて比べてみると、たいして違いがなかったりも。極端でわかりやすい比較写真があればいいんですが、手持ちの中では上手く例が見つかりませんでした。
↓左:グロッケンライン 右:リーガルスキーム。
出資馬の中では比較的寝肩と立肩の馬をチョイスしたつもりですが、うーん、どんなものでしょう。この辺、どなたかに実例付きで詳しくご教授いただきたいところ。
胸(深い/浅い)
- 深い=広い・幅がある、という把握でいいでしょう。積んでいるエンジンが立派かどうかの目安になると考えれば、全体のバランスを壊さない範囲で深いに越したことはないのではないかと。
↓ブルーメンブラット。
体のサイズやバランスから考えれば異常なほど、胸(を中心とした前駆)が発達している馬だったと思います。
膝(被っている/反っている)
- 凸膝/凹膝とも。反っている膝は「弓脚」とも呼ばれ忌み嫌われるという話。確かにどう考えても裏筋への負担が半端ないはず。
↓左:ウインボールド 右:ドリームバレンチノ。
ドリームバレンチノは、弓脚に見えることに目をつぶって出資しました。いつもヒヤヒヤしながら見てます。
腱離れ(いい/悪い)
- 管の筋がクッキリ見えている状態は「腱離れがいい」と表現し、故障しにくいものとして歓迎されます。「乾燥している/湿度が高い」という言い回しも同様と考えていいでしょう。
↓ドリームゼニス。募集時ではなく1歳11月の写真です。
蟻洞で長期休養を余儀なくされましたが、基本的にはタフネスの権化という感じ。
管(太い/細い)
繋ぎ(長い/短い・寝ている/立っている)
- 繋ぎが短くて立っているような形の場合、ざっくりと「窮屈だ」と評する場合もあります。その逆は「ゆとりがある」と表現する場合が多いように思います。あとは、実際動かしてみて「前捌きが硬い/柔らかい」という評価基準を重視する向きも。個人的には、一部の例外こそあれ基本的には造りに動きも準ずると判断し、静止画での形を重視しています。動画を見てもよく分からないというのもありますが。
↓左:ビンテージチャート 右:ウインスカイハイ。
ビンテージチャートは「窮屈」、ウインスカイハイは「ゆとりがある」と評するべきと思いますが、戦績を見ると前者は東京芝2400mを勝ち、後者は芝で勝ちきれずダートで2勝。難しいところです。ただビンテージについては、陣営が蹄鉄などで工夫に工夫を重ねて、それでもなかなか使い込めないあたり、窮屈さが影響しているようには思います。
背中(短い/長い・鯉背/背ったれ)
- 短くて垂れていない背中がいい、というのがざっくりとした評価ですが、背中が短いと距離がもたないとか、「長駆短背」といって腹側が長ければもつとか、色々な話があってなかなか難しいところ。実例としては、ジャンポケが背ったれ気味というのはよく聞く話、あとタイキシャトルなんかは背中が短いな、という印象も。ただ、どこからどこまでが背中なのかは個人的に結構曖昧だったりしますが。ともあれ、弛んでいるよりは、張りがあって力が感じられる背中のほうがいいのでは、といったあたりで。
↓ロードアリエス。
所謂「長駆短背」だと思うので、マイル〜1800mで使われている現状は微妙。
胴(長い/短い)
- 胴が短い馬は「寸が詰まった」、長い馬は「胴伸びがある」という言われかたもしますね。主に距離適性に影響がある(あるいは距離適性を示す)とされている要素です。
腹袋(大きい/小さい)
- あんまりボテ腹すぎるのもアレですが、内臓面の強さを示していると考えられるのでしっかりしているのは悪くないでしょう。
ヨロ(発達している/いない)
- 人間で言うと太もも、ということになるんでしょうか。その部分の肉付き具合。余程貧弱でなければそんなに意識しません。全体的には線が細いけれどヨロだけはムキムキ、みたいな馬はあまりいないでしょうし。
腰(高さ)
- 「腰が低い馬」がいたら面白いですが、それはともかく、主に成長度の目安として使われます。ケースにもよりますが、「キ甲が抜けている/抜けていない」とセットと考えていいかも。あまり腰高だと嫌われる傾向もあるようですが、個人的には「腰高は金」という考え方です。もちろんキ甲が抜けた時の馬体をきちんとイメージすることが大前提ですが。
腰(パンとしている/甘い)
- 腰萎(腰フラ)とかだともう見た目ではわかりませんし、動かしてみてどうかという要素が強いとは思いますが、トモの力強さが足りないように見える馬が「甘い」と評されるパターンは多い気がしています。
尻(平尻/斜尻)
- 口では説明しづらいのでhttp://www.umaichi.com/souma/practice/practice_stp04.htmlを参照のこと(えー)。
トモ(大きい/小さい)
- 静止画で馬の能力を見極めるのに、一番分かりやすい指標と言えるでしょう。
↓上:グロリアスウェイ 下:プライヴァティーア。
プライヴァティーアもよく走ってくれた馬ではあるんですが、パンチ力不足は否めませんでした。グロリアスウェイは無事ならどれほど活躍してくれたことかと今でも残念。ちなみに見た目だけではなく数字で比較してみると、体長(胸前〜尻端)に占める尻幅の割合は、グロリアスウェイ約35%:プライヴァティーア約30%、となりました(画像ソフトの機能で測ったピクセル数で算出)。
飛節(浅い/深い)
- 浅い→直飛、深い→曲飛、ということになりましょうか。
↓左:ロードアイアン 右:フランボワイヤン。
好みの問題かもしれませんが、曲飛の場合は腰が余程強くないと負担ばかり大きくて長所を活かせない印象があります。そういう意味で直飛の方がまだ無難かなと。
尾離れ(いい/悪い)
- 形というより状態の問題という話もありますが、尾が尻から離れている方が力があっていい、と。尾の力強さは腰の力強さにもつながっている、という説もあり。
↓キャトルマン。
一応いい(ように見える)例として挙げてみましたがどんなものでしょう。<前後から>
肢勢(外向/内向、O状飛節/X状飛節)
- これに関しては細かく言い出すとキリがないぐらい色々な判断基準があるので詳細は割愛。ただ、個人的にはよく言われるように「真っ直ぐな馬のほうが少ないし……」というのが実感です。ベガのエピソードを引くまでもなく、曲がってても走る馬は走りますし、気にしすぎても仕方ないというのが自分のスタンス。もちろん、明らかにおかしい馬や、目立って歩様に見せている馬(極端な外弧/内弧歩様)なんかは一応警戒しますが。ちなみに飛節も所謂人間の「O脚/X脚」のような形態があり、前肢ほど気にはされていない印象ではありますがやはり評価対象となります。
幅(ある/ない(薄い))
- 幅のない馬の代表格としては、管理したバファートに「フィッシュ」と呼ばれた米二冠馬・Real Quietが挙げられます。
He was nicknamed "The Fish" by his trainer, due to his narrow frame.
http://en.wikipedia.org/wiki/Real_Quiet
バファート師いわく、「航空力学的に優れている」と評したとかなんとか。その真偽はともかく、あんまりどっしりしすぎているのもスピード競馬への対応力という点でどうかなとは思います。
抱き(狭い/広い)
- 狭踏姿勢/広踏姿勢、とも。広い馬はドタドタ走るパワー型、というイメージはありますが、特にデータや解剖学的な根拠があるわけではありません。
↓ウインクロニクル。
ボチボチ広め、ぐらいでしょうか。他の出資馬ではマイネプリンセスなんかも広いようですが、正面画像はなし。<全体的に>
皮膚(薄い/厚い)
- 薄くてビロードのような艶がある馬が良いとされているようです。経験的にも、皮膚の厚ぼったさが指摘されている馬は、代謝が悪いのか仕上がり遅だったり絞れにくかったり体調の上向きが遅かったりするイメージがあります。
↓再びブルーメンブラット。
自分が持った馬の中では最高級の皮膚だと思います。
骨量(ある/ない)
- もちろんある方がいいんでしょうけど、そんなの見た目ではわからないし……と思ってたら、たまたま読んでいた本にこんな記述が。
「骨」という用語は前管の周囲を膝のすぐ下で測った値を指す。おおよその目安として、これが八インチ(約二〇センチ)のウマは七六キロまでのものを乗せることができ(後略)
『図説馬と人の歴史全書』(東洋書林)P87より
これはつまり、骨量ほぼイコール管囲、と考えていいってことでしょうか。一般的な把握ではもっと大きな意味で使っている気もしますが、さて。
締まり(緩い/キツい)
張り(ある/ない)
芯力(ある/ない)
粘り(ある/ない)
- この辺はラフィアンの募集馬パンフによく出てくる表現で、「総帥用語」なんじゃないかという気もします。個人的にはなんとなくわかるような気もするんですが、総帥に毒されているだけかも。とにかく字面からなんとなくイメージしてくださいとしか。
↓マイネルシトラス。
“筋肉の粘りと芯力を評価”しているとのこと(パンフコメントより)。さて、いかがでしょうか。
▼これだけ色々考えても、結局は第一印象とか雰囲気で選んじゃうことが多いのが我ながら残念。今年の1歳世代は、ある程度厳密にやるつもりですが、それで結果が出なかったら悲しいなぁ。いくら理屈があっても、結局は見極める「眼」がないとダメなわけで、その辺全く自信がありません。難しいから面白いのは確かなんですが……。